
N1レベルの優秀な外国人留学生を、現場のリーダーやマネジメント層として迎え入れたい。そうお考えの人事担当者様にとって、「特定活動46号」はまさに戦略的な在留資格です。しかし、「現場の清掃業務も任せたいが法的に許されるのか?」「報酬要件の比較対象が曖昧で不安…」といった、制度のグレーゾーンや実務的なリスクに直面し、採用に踏み切れないケースも少なくありません。
本記事では、2025年最新の入管審査傾向に基づき、企業が抱える「不許可リスク」を完全に排除するための具体的なノウハウを徹底解説します。この記事を読めば、企業の外国人材採用計画が法的に確実であるという確証を得られ、安心して高度な日本語人材の活用を進めることができるでしょう。
目次
第1章:特定活動46号—現場を変革する「高度日本語人材」の戦略的価値
■制度導入の背景と2025年最新の動向
特定活動46号は、日本国内の大学や大学院を卒業した優秀な外国人留学生の国内就職を促進するため、2019年5月に新設された在留資格です。従来の就労ビザである「技術・人文知識・国際業務(技人国)」では認められなかった、サービス業や製造現場での「現業(単純作業)」を含む幅広い業務を許可する点が最大の特徴です。
特に2024年2月には、日本の専門学校や短大卒業生も特定活動46号の対象に拡大され、企業にとって優秀な高度日本語人材を確保する新たな機会が広がりました。しかし、この対象拡大は同時に、許可を得るための「職務設計の複雑化」というリスクも伴います。特定活動46号は、従来の在留資格では難しかった「現場での知識活用と単純作業の複合」を可能にする、企業にとっての新たな戦略的選択肢として、その活用方法を正確に理解することが重要です。
■46号が解消する企業の主要な経営課題
深刻な人手不足に直面する中堅企業、特に介護施設、ホテル・旅館、大規模飲食チェーンなどでは、現場の外国人スタッフの管理監督、日本語による顧客対応品質の維持、そして外国人材の定着率向上を担うリーダー候補の確保が喫緊の課題となっています。
特定活動46号で雇用されるN1レベルの高度日本語能力を持つ人材は、これらの課題解決に大きく貢献できます。彼らは単なる労働力としてではなく、日本の文化やビジネス習慣を理解し、現場の日本人スタッフと外国人スタッフの橋渡し役として、あるいは顧客対応の質を高める「総合職」としての価値を持つことができるでしょう。46号人材は、企業の成長戦略に不可欠な存在として、その活用が期待されています。
第2章:法的要件の厳格な検証:採用可否を決定する4つのチェックポイント
特定活動46号の申請には、厳格な法的要件を満たす必要があります。これらの要件を正確に理解し、自社の採用計画が適合しているかを事前に確認することが、不許可リスクを回避する上で不可欠です。
■学歴要件と日本語能力要件
特定活動46号の申請には、以下の学歴と日本語能力が必須とされています。
学歴要件:
日本の大学または大学院を卒業していること。
または、日本の専門学校で「高度専門士」の称号を取得していること。
重要注意点: 海外の大学卒業者や、日本の短大・高専卒業者単独では対象外となります。
日本語能力要件:
日本語能力試験(JLPT)N1に合格していること。
または、ビジネス日本語能力テスト(BJT)で480点以上を取得していること。
これらの要件を満たしているかどうかが、まず最初の採用可否を決定する重要なポイントとなります。
■雇用形態と報酬要件:不許可リスクが高い「同等報酬」の証明実務
特定活動46号の申請において、特に注意が必要なのが雇用形態と報酬に関する要件です。
雇用形態:
常勤(フルタイム)雇用が必須とされており、派遣社員やパート・アルバイトとしての雇用は認められません。
報酬要件:
「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上であること」が求められます。
この「同等報酬」の証明は、入管審査において非常に厳しくチェックされる項目であり、その曖昧さが不許可リスクに直結します。
地域相場: 当該地域における同職種の平均的な報酬水準。
社内賃金体系: 社内における同一職務・同等経験の日本人社員の給与水準。
経験年数・役職: 応募者の経験年数や、就任予定の役職に見合った報酬であること。
これらの客観的な基準に基づき、報酬が適正であることを論理的に説明できる準備が不可欠です。
第3章:実務リスクの核心—「業務範囲の法的境界線」の徹底解釈
特定活動46号の制度の核心であり、最も審査が厳格になるのが「業務範囲の複合性」です。この法的境界線を正確に理解することが、許可取得の鍵となります。
■技人国・特定技能との決定的な違い:なぜ特定活動46号は「現業」を許容するのか
従来の就労ビザである「技術・人文知識・国際業務(技人国)」が原則として現業(単純作業)を不可とするのに対し、特定活動46号は「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」と「大学などで習得した知識・応用能力を活用する業務」の2点を満たす場合に限り、単純作業(現業)の従事が付随的に認められる点が決定的な違いです。
特定技能ビザは、現場の単純業務がメインであるため、知識活用やマネジメント業務とは性質が異なります。46号は、N1レベルの高度な日本語能力と専門知識を兼ね備えた人材が、現場で直接働きながら、その知識を活かして指導や改善を行うという、より柔軟な働き方を可能にする制度と言えるでしょう。
特定活動46号と他の就労ビザの主な違いは以下の通りです。
■入管審査官の視点:複合業務における「主たる活動」の証明ロジック【2025年最新解釈】
入管審査では、申請者の活動が「全くの単純作業のみに従事すること」になっていないか、知識・応用能力を活用する業務が「主たる活動」として成立しているかが厳しくチェックされます。許可される活動は、知識活用と日本語能力の組み合わせが必須であるという原則を忘れてはなりません。
例えば、以下のような業種別の事例で、許可される活動と不許可となる活動の境界線を見てみましょう。
介護施設:
許可される活動の組み合わせ: 外国人スタッフへの指導、利用者との意思疎通を図りながらの介護業務
不許可となる活動(単純作業のみ): 施設内の清掃や衣服の洗濯のみ
法的解釈のポイント: 指導・意思疎通が知識活用と見なされ、介護業務を主たる活動として成立させる。
ホテル・旅館:
許可される活動の組み合わせ: 観光企画の立案を行いつつ、通訳を兼ねた接客・ベルスタッフ業務
不許可となる活動(単純作業のみ): 客室の清掃にのみ従事すること
法的解釈のポイント: 企画・翻訳・通訳業務が「知識の応用」として、現業を上回る価値を持つ。
製造業:
許可される活動の組み合わせ: 品質管理データ分析を行いつつ、現場のライン作業指導やフライス盤操作
不許可となる活動(単純作業のみ): フライス盤の操作のみ、清掃のみ
法的解釈のポイント: 設計や企画といった知識業務がメインであり、現場作業は一時的または付随的であること。
この業務複合性の証明において重要なのは、その企業特有の課題を明確にし、特定活動46号人材がその解決に不可欠であることを論理的に証明することです。特定活動46号の雇用形態は「常勤」に限定され、派遣が認められていません。また、転職時には在留資格変更許可申請が必要となります。この「常勤性」と「特定企業への依存性」の高さは、業務内容が企業固有の特殊な状況に基づいていることを入管が期待している証拠であり、この期待に応える論理構築こそが、不許可リスクを避けるための最重要課題となります。
第4章:STAYWORKER実践ノウハウ:不許可を避けるための手続き完全ガイド
特定活動46号の申請は、要件の複雑さから不許可リスクも高く、専門的なノウハウが不可欠です。ここでは、不許可を避けるための手続きガイドをご紹介します。
■失敗しない申請フローと所要期間の目安
特定活動46号の申請フローは、大きく「申請前の職務設計と書類準備」と「入管による審査」に分かれます。
実務的な目安として、ご相談から申請書類作成まで約3週間を要し、申請から審査の結果まで1〜2か月程度の期間を見込む必要があります。初回の在留期間は原則1年で設定されることが多いです。この初期期間に、申請時の活動計画が確実に実行されているか、社会保険等の適正管理が行われているかが更新時に確認されるため、事前の計画策定が極めて重要になります。
■不許可リスクをゼロにする「雇用理由書」作成の3原則
在留資格申請において、企業の採用意図と職務内容の適法性を証明する「雇用理由書」は最も難易度の高い書類です。入管審査官を納得させ、不許可を避けるためには、以下の3原則を徹底する必要があります。
原則1:必要性の明記
なぜ「技術・人文知識・国際業務(技人国)」や「特定技能」では不十分で、なぜ「特定活動46号」でなければならないのかを論理的に説明します。例えば、「現場の多言語対応が必要な接客業務と、外国人スタッフの日本語指導・マネジメントを複合的に行う必要があり、これには高度な日本語能力と日本の大学で培った知識が不可欠である」といった具体的な理由を明確に記述します。
原則2:知識活用の証明
応募者が日本の大学・大学院・専門学校で培った知識(例:経営学、観光学、国際関係学、日本語教育など)が、現場の業務に具体的にどう活かされているかを客観的に示します。単なる経験や技能ではなく、学術的な知識や応用能力が職務に直結することを記述します。例えば、「大学で学んだ異文化コミュニケーション理論を活かし、外国人スタッフ向けのマニュアル改善や、顧客対応の品質向上策を策定する」といった具体例を盛り込みましょう。
原則3:業務比率の明確化
知識活用業務(指導・企画、翻訳・通訳など)が単純作業(現業)を上回ることを客観的に示すための職務記述書(Job Description)を作成し、業務全体に占める比率を明確に提示します。例えば、「週の業務時間の〇%は知識活用業務、〇%は日本語を用いた意思疎通を要する業務、残りの〇%は付随的な単純作業」といった形で、知識活用業務が「主たる活動」であることを論証します。
■在留期間更新と転職時の管理留意点
特定活動46号は、他の就労資格と異なり、転職時に必ず在留資格変更許可申請が必要となります。これは、同一法人内の配置転換であれば届出で済む技人国(法人番号が同一の場合)よりも手続きが複雑化することを意味します。企業側は、この厳格な管理体制を理解し、初期契約時に人材に明確に説明することで、定着へのコミットメントを高める必要があります。
また、在留期間更新時には、申請時の活動計画が実際に実行されているか、納税状況や社会保険加入の適正管理が行われているかが確認されます。長期的なコンプライアンス維持のためにも、適正な労務管理が求められます。
第5章:特定活動46号採用の法的確実性へ
■特定活動46号採用の法的リスクを回避し、確実な成果を出すために
特定活動46号は、高い日本語能力と日本の学歴を持つ優秀な外国人留学生を、現場のマネジメント層やブリッジ人材として活用するための極めて戦略的な在留資格です。しかし、「単純作業+知識活用」という業務複合性の法的解釈や、「同等報酬」の証明における実務的な難しさから、自社で手続きを進めることには高い不許可リスクが伴います。
このような法的・実務的な複雑性を理解し、そのリスクを確実に回避するためには、専門的なノウハウを持つパートナーの存在が不可欠です。
ぜひ一度、専門家に相談してみてください。
執筆者:STAYWORKER事業部 / 益田 悠平
監修者情報:外国人採用コンサルタント / 堀込 仁志
株式会社USEN WORKINGの外国人採用コンサルタント。人材紹介・派遣の法人営業として多くの企業の採用課題に、そして飲食店経営者として現場のリアルに、長年向き合ってきた経験を持つ。採用のプロと経営者、双方の視点から生まれる具体的かつ実践的な提案を信条とし、2022年の入社以来、介護・外食分野を中心に数多くの企業の外国人採用を成功に導く。