
 
「留学生を採用したいけれど、法律違反が怖くて一歩踏み出せない...」
外国人採用に初めて取り組む担当者様にとって、この不安は当然のものです。特に留学生のアルバイトは「週28時間ルール」や「長期休業期間の例外」など、非常に複雑な規制があり、「不法就労助長罪」という重い罰則リスクが常に伴います。
 
本記事は、入管法や在留資格の専門知識がない初心者の方でも、企業側の「過失」を徹底的に回避し、安全かつ合法的に留学生を採用するための実務的な手順と確実なチェックリストを提供します。この記事をコンプライアンス・マスターガイドとして活用し、「知らなかった」では済まされないリスクから会社を守り、安心して採用活動を推進してください。
 
目次
 
採用担当者が知るべき留学ビザ採用コンプライアンスの全体像
 
 
■留学ビザ人材採用の機会と初心者の最大の不安
 
日本国内では労働力不足が深刻化しており、学業と両立しながら働く意欲を持つ留学生は、企業にとって非常に重要な労働力リソースとなっています。彼らは現在のアルバイト戦力だけでなく、将来的に「特定技能」などへの移行を通じて長期的な人材パイプラインを形成する候補でもあります。
 
しかし、外国人採用に初めて取り組む採用担当者様は、その法規制の複雑さから「法律違反をしてしまうのではないか」「不法就労させてしまった場合の罰則が怖い」という強い不安を抱えています。
 
本記事は、この不安を解消し、企業側の法的リスク(不法就労助長罪)を徹底的に回避するための実務的なガイドラインを提供することを目的としています。
 
 
厳罰!企業側の「過失」が問われる不法就労助長罪の仕組み
 
 
■ 不法就労助長罪とは? 構成要件と重い罰則の解説
 
不法就労助長罪は、外国人採用において企業が直面する最も重大な法的リスクです。外国人に不法就労活動をさせたり、それをあっせんしたりすることにより成立します。
 
不法就労となる代表的なケースは以下の3点です。
 
- 在留資格がない、または期限が切れている者が働くケース(不法滞在者など)。
- 就労が認められていない在留資格の者が、「資格外活動許可」を得ずに働くケース(例:観光等の短期滞在者)。
- 出入国在留管理庁から認められた活動範囲を超えて働くケース(例:留学生が週28時間などの規定時間を超過して働く)。
この罪が適用された場合、企業には懲役または罰金という重い罰則が科せられる可能性があります。
 
罰則の深刻さをさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。
 
人事・採用担当者必見!不法就労助長罪の罰則強化と企業が取るべき3つのリスク回避策
 
■「知らなかった」は通用しない!企業側の注意義務の基準
 
不法就労助長罪は原則として故意犯ですが、企業は外国人の在留資格や就労範囲について厳格な確認を行う「注意義務」を負っています。
「うちの学生が勝手に超過した」と弁明しても、この注意義務を怠ったことが「過失」と判断されれば、処罰の対象となり得るのです。これが「知らなかったでは済まされない」と言われる法的構造です。
 
企業が「過失とみなされないための最低限の線引き」を守るには、以下の厳格な注意義務を確実に履行し、その記録を保管しなければなりません。
 
 
 
 
 留学ビザの労働時間規制:28時間と40時間ルールの実践
 
 
■資格外活動許可の基本と「週28時間」の原則
 
「留学」の在留資格を持つ学生がアルバイトとして働くためには、出入国在留管理庁から「資格外活動許可」を得ていることが絶対的な前提です。企業は、雇用前に必ず在留カードの裏面でこの許可を確認しなければなりません。
 
- 通常期間の制限: 学業期間中、留学生は週28時間以内でしか働くことができません。
- 合計時間の責任: この週28時間は、複数のアルバイト先がある場合、そのすべての労働時間を合算した合計時間で計算されます。つまり、企業は自社だけでなく、他の雇用先も含めた合計労働時間の管理責任を負います。
■【最重要リスク回避】長期休業期間(40時間)の適用と確認義務
 
規制の例外として、留学生が在籍する教育機関の学則等により定められた夏季・冬季・春季休業の期間においては、労働時間の上限が緩和されます。
 
- 緩和された制限: 長期休業期間に限り、1日8時間以内、かつ週40時間以内の労働が許可されます。
ここで最も重要なのは、企業側の「文書での確認義務」です。企業がこの週40時間の例外を適用するためには、その休業期間が学校の学則で正式に定められていることを文書で確認しなければなりません。口頭での確認は不十分であり、不法就労助長罪における「過失」を問われるリスクに直結します。
 
■複数勤務先・長期休業期間の確実な管理方法(実務編)
 
企業が注意義務を徹底的に果たした証拠を残すための実務手順は以下の通りです。
 
- 誓約書の取得: 労働時間に関する厳守事項と、他社での就労状況を正確に申告する旨を記載した誓約書を本人から取得し、合計労働時間が週28時間(または40時間)を超過しないことを確約させます。
- 課税証明書の推奨: 口頭での自己申告に不安が残る場合は、本人に課税証明書の提出を促し、他社での就労実態を間接的に確認することが、企業が最大限の注意を払った証拠となります。
- 文書のコピー保管: 長期休業期間を適用する場合、必ず学校の学則や年間スケジュール表といった客観的な文書をもって休業期間を確認し、そのコピーを保管してください。
  初心者でも迷わない!雇用前後の必須手続きステップ
 
 
■雇用前の厳格な法定確認フロー
 
 
 
このフローでは、在留カードの原本確認(在留資格、期間)とコピー保管が、不法就労助長罪における過失回避の最も重要な証拠となることを忘れないでください。
 
■雇用後の重要手続きと「企業の防御策」としての届出
 
外国人(特別永住者を除く)を雇い入れた際と、離職した際に、企業はハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を提出する義務があります。
 
この届出は単なる事務手続きではなく、届出に「資格外活動許可の有無」を正確に記載することで、企業が雇用時に適切な確認を行ったという公式な証拠記録となります。もし不法就労助長罪の疑いをかけられた際、この届出が企業が注意義務を果たしたことの重要な「防御策」となり得るのです。
 
手続きの詳細を知りたい方は、以下の記事をご確認ください。
 
外国人雇用状況届出書を失敗しない!人事・総務担当者が自信を持って提出できる完全ガイド
 
■期限切れを防ぐ在留資格更新の管理とサポート
 
在留資格には期限があり、期限が切れると不法滞在となります。企業は、外国人労働者の在留資格の更新時期を正確に把握し、遅延を防ぐためのサポートが推奨されます。
 
- 申請時期: 在留期限の3ヶ月前から更新申請が可能です。
- 実務対応: 企業は期限管理台帳を必須で作成し、期限が近づく前に計画的な通知と手続きサポートを行う体制を構築しましょう。
まとめ:【留学ビザ 採用 コンプライアンス】遵守の最終チェックリスト
 
 
留学ビザ 採用 コンプライアンスの核心は、「不法就労助長罪の過失リスクを回避するための文書による注意義務の履行」にあります。
 
最後に、これだけは押さえておきたい最終チェックリストをご確認ください。
 
- 在留カード原本確認とコピー保管:済
- 資格外活動許可の有無・範囲の厳格な確認:済
- 長期休業期間の学則(文書)確認:済
- 複数のアルバイト先がある場合の誓約書/課税証明書確認:済
- 外国人雇用状況の届出(雇入れ時・離職時)の確実な提出:済
その他の在留資格の就労制限
留学生以外の在留資格にも、それぞれ就労に関する制限が設けられています。
 
- 「家族滞在」:原則として週28時間以内の就労制限があります。
- 「特定活動」:活動内容により就労の可否や範囲が異なります。
就労制限がある在留資格は複数あるため、必ず在留カード、更新期限の確認を必ず行いましょう。
 
 
執筆者:STAYWORKER事業部 / 益田 悠平
監修者情報:外国人採用コンサルタント / 堀込 仁志
株式会社USEN WORKINGの外国人採用コンサルタント。人材紹介・派遣の法人営業として多くの企業の採用課題に、そして飲食店経営者として現場のリアルに、長年向き合ってきた経験を持つ。採用のプロと経営者、双方の視点から生まれる具体的かつ実践的な提案を信条とし、2022年の入社以来、介護・外食分野を中心に数多くの企業の外国人採用を成功に導く。