
人手不足が深刻化する中、特定技能外国人材の採用は多くの企業にとって喫緊の課題となっています。しかし、「特定技能協議会」という言葉を聞いて、「結局、うちの会社に本当に必要なの?」「加入手続きがすごく面倒くさいんじゃないか?」「いつまでに加入すればいいのか、費用はかかるのかも分からない…」と、不安や疑問を抱えている人事担当者様、経営者様は少なくないのではないでしょうか。
ご安心ください。本記事では、特定技能協議会の具体的な加入義務、最新の申請手続き、費用、そして注意点まで、企業担当者が知りたい情報を網羅的に、かつ分かりやすく解説します。このガイドを読めば、複雑に感じていた協議会への加入プロセスがクリアになり、企業が外国人材をスムーズに受け入れ、人手不足を解消するための具体的な一歩を踏み出せるようになります。
目次
特定技能協議会とは?義務と必要性を知る
特定技能協議会は、特定技能外国人材を受け入れる企業にとって、その制度を円滑かつ適正に運用するために欠かせない組織です。まずはその基本的な役割と、なぜ加入が義務とされているのかを理解しましょう。
■特定技能協議会の目的と役割
特定技能協議会は、特定技能制度が適切に機能し、外国人材が安心して働ける環境を整えることを目的としています。これは、各産業分野を管轄する省庁によって設置される機関です。
その主な役割は以下の通りです。
- 構成員の連携強化: 特定技能所属機関(外国人材を受け入れる企業)や登録支援機関など、制度に関わる関係者間の情報共有や連携を促進します。
- 制度・情報の周知: 特定技能制度の最新情報や運用に関する重要な情報を、構成員に周知徹底します。
- 法令遵守の啓発: 法令を遵守し、適正な外国人材の受け入れ・支援が行われるよう、啓発活動を行います。
- 地域ごとの人手不足把握・対応: 各地域の産業分野における人手不足の状況を把握し、制度運用に反映させるための調整を行います。
特定技能協議会を、特定技能制度という大きな船が無事に航海するための「運行管理センター」のようなものにたとえるなら、その役割は船の安全と乗組員のサポートを包括的に行うことです。
■なぜ加入が「義務」なのか?
特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)や、その支援を担う登録支援機関は、該当する分野の特定技能協議会に
加入することが法律で義務付けられています。
この加入義務は、
出入国管理及び難民認定法(入管法)第19条の17に定められており、特定技能外国人材の在留資格を申請する際の
前提条件となります。つまり、特定技能協議会への加入が完了していなければ、外国人材の在留資格申請を進めることができません。
これは、特定技能制度が国を挙げて推進する重要な政策であり、その適正な運用を確実にするための重要なルールです。法令を遵守し、制度の健全な発展に貢献するためにも、加入は必須とされています。
■ 加入しないとどうなる?(未加入のリスク)
「義務」と聞くと、少し面倒に感じられるかもしれません。しかし、特定技能協議会への加入を怠ることで、企業の外国人材受け入れ計画に大きな支障をきたす可能性があります。
具体的には、以下のようなリスクが考えられます。
- 外国人材の受け入れ計画の遅延または却下: 最も大きなリスクは、在留資格申請が受理されず、外国人材の受け入れが遅れたり、最悪の場合は申請が却下されたりすることです。人手不足の解消を急いでいる企業様にとって、これは大きな機会損失となりかねません。
- 事業運営への支障: 予定していた人材が確保できないことで、生産計画やサービス提供に影響が出たり、既存社員への負担が増加したりするなど、事業運営全体に支障をきたす恐れがあります。
過去には、協議会加入の重要性を軽視し、「後回しでも良いのでは?」と考えていた企業様もいらっしゃいました。迅速な人手不足解消のためにも、協議会への早期加入を強くおすすめします。
特定技能協議会とは?義務と必要性を知る
特定技能協議会への加入は義務ですが、その手続きは初めての方には少し複雑に感じられるかもしれません。ここでは、最短で加入を完了させるためのステップを解説します。
■ 加入タイミング:いつまでに、どの段階で?
特定技能協議会への加入は、
特定技能外国人の在留資格申請を行う前に完了している必要があります。
これは非常に重要なポイントです。
特定技能外国人材の採用プロセス全体の中で、協議会加入は以下のような位置づけになります。
- 人材募集
- 面接・選考
- 内定
- 特定技能協議会加入申請(ここが重要!)
- 在留資格申請
- 入国・就労開始
人手不足の解消を急ぐ企業様にとって、このタイミングを逃さないことが、迅速な人材確保の鍵となります。
■ 加入申請のステップ(必要書類・フォーム記入例)
加入申請の具体的な流れは、分野によってオンライン申請と郵送申請がありますが、基本的なステップは共通しています。
- 該当分野の協議会ウェブサイトを確認: まず、受け入れる特定技能外国人の分野(例:飲食料品製造業、外食業、介護など)を管轄する省庁の協議会ウェブサイトにアクセスします。
- 加入申請書を入手: ウェブサイトから加入申請書(オンラインフォームまたはPDF)をダウンロードします。
- 必要事項の記入: 申請書に企業情報、代表者情報、受け入れ予定の外国人材に関する情報などを正確に記入します。オンライン申請の場合は、画面の指示に従って入力を進めます。
- 必要書類の準備: 申請書と合わせて提出が必要な書類を準備します。一般的には以下のような書類が求められます。
- 法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 直近の決算報告書(貸借対照表、損益計算書など)
- 役員に関する宣誓書
- その他、各協議会が指定する書類
- 【特定技能協議会 加入申請チェックリスト(PDF)】ダウンロードしてご活用ください。
申請書の提出: オンライン申請の場合は、入力完了後に送信ボタンをクリックします。PDF申請の場合は、必要書類と合わせて郵送します。
- 事務局からの連絡: 申請後、事務局からメールなどで受理連絡や、追加書類の提出依頼が来る場合があります。指示に従って速やかに対応しましょう。
■ 業種別の具体的な協議会と加入方法
特定技能協議会は、特定技能の対象となる16分野ごとに設置されています。企業が受け入れる外国人材の分野に応じて、加入すべき協議会が異なります。
それぞれの協議会への具体的なアクセス方法や申請方法の入り口は、
各省庁の公式サイトで「〇〇特定技能協議会」と検索することで確認できます。
令和7年5月30日には風営法の許可を受けた旅館・ホテルにおける外食業分野での特定技能外国人受入れが可能になる改正が行われました。このように、制度は常に更新されるため、最新の情報を確認することが重要です。
■ 2人目以降の受け入れ・分野追加時の手続き
すでに特定技能外国人を受け入れている企業様が、
2人目以降の外国人材を受け入れる場合や、
新たな事業分野で特定技能外国人を受け入れる場合も、協議会への手続きが必要となることがあります。
多くの場合、新規加入と同様に、該当する協議会への加入申請や変更届の提出が求められます。ただし、すでに加入している協議会内で、単に追加の外国人を受け入れるだけであれば、簡略化された手続きで済むケースもあります。
事業拡大や人材計画の変更に伴い、手続き内容が変わる可能性がありますので、事前に各協議会のウェブサイトや管轄省庁の情報を確認することをおすすめします。
特定技能協議会の費用・審査期間・注意点
特定技能協議会への加入は、費用や審査期間など、気になる点がいくつかあるかもしれません。ここでは、企業担当者様が特に疑問に思うポイントと、手続きをスムーズに進めるための注意点について解説します。
■ 特定技能協議会の会費はかかる?
特定技能協議会の会費については、原則として、
建設分野、工業製品製造業分野以外は会費が不要です。
ほとんどの分野では、加入自体に費用は発生しません。これは、特定技能制度の普及と円滑な運用を目的としているためです。
ただし、
建設分野、工業製品製造業分野のみ会費が必要となります。
建設分野の協議会は、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)、工業製品製造業分野の協議会は一般社団法人工業製品製造技能人材機構(JAIM)が運営しています。
他の分野とは異なる運営体制をとっているため、その運営費用を会費として徴収しています。
詳細はJAC、JAIMの公式サイトをご確認ください。
JAC公式サイト
JAIM公式サイト
■審査期間の目安と「遅延」を防ぐコツ
特定技能協議会への加入申請の審査には、
数週間から1〜2ヶ月を要する場合があります。これは、申請内容の確認や、必要書類の精査に時間がかかるためです。
人手不足の解消を急ぎ、迅速な外国人材の受け入れを希望する企業様にとって、この審査期間は非常に重要です。遅延を防ぎ、スムーズに手続きを進めるためには、以下のコツを意識しましょう。
- 早期申請の徹底: 外国人材の採用計画が具体化した段階で、できるだけ早く協議会への加入申請を行いましょう。在留資格申請の直前ではなく、余裕を持ったスケジュールで進めることが肝心です。
- 書類の事前準備: 申請に必要な書類は事前にリストアップし、不備がないか入念にチェックしながら準備を進めましょう。
- 正確な情報入力: 申請フォームや書類への記入は、誤りがないよう慎重に行いましょう。
- 不明点の早期確認: 申請方法や必要書類について不明な点があれば、速やかに協議会の事務局や専門家に問い合わせ、疑問を解消しておきましょう。
■書類不備による差し戻しを防ぐには?
特定技能協議会への加入申請で最も避けたいのが、
書類不備による差し戻しです。差し戻しが発生すると、再提出や再審査に時間がかかり、外国人材の受け入れプロセスが大幅に遅れる原因となります。
差し戻しを未然に防ぐためには、以下の対策を講じましょう。
- チェックリストの活用: 協議会が提供しているチェックリストを積極的に活用し、提出前に全ての書類が揃っているか、内容に漏れがないかを確認しましょう。
- 専門家によるダブルチェック: 申請に不慣れな場合は、特定技能制度に詳しい行政書士や専門機関に相談し、書類の準備や内容の確認を依頼することをおすすめします。
- 公式ガイドラインの熟読: 各協議会のウェブサイトには、申請に関する詳細なガイドラインやFAQが掲載されています。これらを熟読し、疑問点を解消しておくことも重要です。
特定技能協議会に関するよくある質問(FAQ)
特定技能協議会について、企業担当者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
■登録支援機関は協議会に加入義務がありますか?
はい、
登録支援機関も特定技能協議会への加入義務があります。
登録支援機関は、特定技能外国人の支援計画を作成し、実施する機関です。そのため、
「特定技能外国人の支援に関する運用要領」に基づき、支援する特定技能所属機関(企業)が加入すべき分野の協議会に、自らも構成員として加入することが義務付けられています。これは、特定技能制度全体の適正な運用を担保するための重要なルールです。
■特定技能協議会加入のメリットは何ですか?
特定技能協議会への加入は、単なる義務にとどまらず、企業様にとって複数のメリットがあります。
- 制度の円滑な利用: 協議会の構成員となることで、特定技能制度の運用に関する最新情報や、手続きの変更点などをいち早く入手できます。これにより、制度をスムーズに活用し、外国人材の受け入れを円滑に進めることができます。
- 最新情報の共有: 制度改正や運用変更があった際に、協議会から直接情報が提供されるため、常に正確な情報に基づいた対応が可能です。
- 構成員間の連携によるノウハウ取得: 協議会によっては、構成員間の情報交換や意見交換の場が設けられることがあります。これにより、他の企業様の事例やノウハウを学ぶ機会が得られます。
- 法令遵守の促進: 協議会の活動を通じて、法令遵守意識が高まり、外国人材の適正な受け入れ・支援に繋がります。
- 信頼性の向上: 協議会に加入していることは、企業が特定技能制度を真摯に運用していることの証明にもなり、対外的な信頼性向上に貢献します。
■特定技能制度の最新情報と協議会の関連性は?
特定技能制度は、日本の社会情勢や人手不足の状況に合わせて、
頻繁に法改正や運用変更が行われる性質を持っています。例えば、2024年3月には特定技能2号の対象分野が大幅に拡大され、介護、ビルクリーニング、工業製品製造業など11分野が追加されました。また、令和7年5月30日には風営法の許可を受けた旅館・ホテルにおける外食業分野での特定技能外国人受入れが可能になる改正が行われています。このように、制度は常に更新されるため、最新の情報を確認することが重要です。
特定技能協議会は、これらの制度変更を構成員に周知し、円滑な運用を促進する重要な役割を担っています。協議会からの情報提供は、企業が最新の制度に対応し、法令違反のリスクを回避するために不可欠です。
特定技能協議会は人手不足解消への必須ステップ
本記事では、特定技能協議会の概要から、加入の義務、具体的な手続き、そして費用や注意点まで、企業担当者様が知るべき情報を網羅的に解説しました。
特定技能協議会への加入は、特定技能外国人材をスムーズに受け入れ、企業の「人手不足」という喫緊の課題を解決し、事業の安定と成長を促進するための不可欠なステップです。複雑に感じられる手続きも、正確な情報と適切なサポートがあれば、決して難しいものではありません。
専門機関に相談し、書類の準備や内容の確認を依頼することもおすすめです。
執筆者:STAYWORKER事業部 / 益田 悠平
監修者情報:外国人採用コンサルタント / 堀込 仁志
株式会社USEN WORKINGの外国人採用コンサルタント。人材紹介・派遣の法人営業として多くの企業の採用課題に、そして飲食店経営者として現場のリアルに、長年向き合ってきた経験を持つ。採用のプロと経営者、双方の視点から生まれる具体的かつ実践的な提案を信条とし、2022年の入社以来、介護・外食分野を中心に数多くの企業の外国人採用を成功に導く。