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2025.10.29
雇用関連
在留資格関連
2025.10.29

永住権の審査期間、放置は危険!人事担当者が今すぐ確認すべき3つのリスクと対策

監理団体とは?初めての外国人採用で失敗しない!特定技能との違いと最適な選び方 (3).png
 
「うちで活躍してくれている外国人社員から、『永住権を申請したい』と相談されたが、会社として何をどこまでサポートすれば良いのだろう?」
「審査に1年以上かかるという話も聞くけれど、その間、何か注意すべきことはあるのだろうか?」
 
昨今、このようなお悩みを抱える人事ご担当者様が増えています。実は、永住権の審査期間の長期化は、もはや社員個人の問題ではありません。放置すれば、在留資格の更新漏れによる就労不可や、エース社員の離職といった、予測不能な経営リスクに発展しかねないのです。
 
この記事では、最新の永住権 審査期間の動向から、企業が直面する具体的なリスク、そしてそのリスクを逆手にとって社員のエンゲージメントを高める「攻めのリテンション戦略」まで、人事担当者の皆様が本当に知りたい情報を網羅的に解説します。
 

目次

  1. まずは現状把握:永住権の審査期間、2025年最新の動向は?
 

まずは現状把握:永住権の審査期間、2025年最新の動向は?

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社員から相談を受けたら、まずは正確な現状を把握することが第一歩です。永住権の審査期間は、公式発表と実態に大きな乖離があることを知っておく必要があります。
 

平均審査期間と「標準処理期間4か月」の乖離

法務省は、永住許可申請の「標準処理期間」を4か月と公表しています。しかし、これはあくまで目安であり、現在の運用実態とは大きく異なっているのが現実です。
 
出入国在留管理庁の公表データや専門家の見解を総合すると、近年の平均的な審査期間はおよそ8か月〜1年半程度かかるケースが多くなっています。特に、申請が集中する東京、大阪、名古屋などの都市部の出入国在留管理局では、1年半以上待つことも珍しくありません。
 
社員から「審査期間は4か月と聞いたのですが…」と言われた際には、この実態を丁寧に伝え、長期化することを前提とした計画が必要であることを共有することが重要です。
 

なぜ審査は長期化するのか?3つの主な理由

審査がこれほど長引く背景には、主に3つの理由が挙げられます。
 
  • 申請件数の増加: 日本で中長期的に暮らす外国人の増加に伴い、永住許可を希望する人の数も年々増加傾向にあり、審査が追い付いていない状況です。
  • 審査の厳格化: 税金や社会保険料の納付状況、交通違反歴の有無など、素行に関するチェックが以前よりも厳しく行われるようになっています。
  • 個別の状況確認: 申請者一人ひとりの状況(家族構成、勤務先の安定性、日本社会への定着度など)を詳細に確認するため、どうしても時間がかかります。
 
 

審査の長期化は他人事ではない!企業が直面する3つの経営リスク

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「審査が長いのは分かったけれど、それは本人の問題では?」——もしそうお考えなら、注意が必要です。審査の長期化は、企業にとって看過できない3つの経営リスクを内包しています。
 

リスク1:在留資格の更新漏れと「就労不能」の悪夢

最も警戒すべきがこのリスクです。永住権の審査中であっても、現在持っている在留資格(多くは「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザ)は有効期限を迎えれば失効します。
 
もし、審査が長引いている間にこの在留期間の更新手続きを忘れてしまうと、社員は在留資格を失い「オーバーステイ(在留期間を超えて日本に滞在してしまう、いわゆる不法滞在の状態)」となってしまいます。当然、その状態では雇用を継続することはできず、企業は突然、貴重な人材を失うことになります。これは、企業の労務管理における重大なリスクです。
 

リスク2:エース社員の「不安による離職・転職」

1年以上という長い審査期間は、申請者本人にとって大きな精神的ストレスとなります。自分の将来設計が確定しない不安定な状況は、時に仕事への集中力を削ぎ、生活の質を低下させます。
 
このような状況下で、もし他社から「永住権取得を会社が全面的にサポートします」といった魅力的なオファーがあれば、気持ちが揺らいでしまうのも無理はありません。手塩にかけて育ててきたエース社員を、審査期間中のケア不足が原因で失ってしまうことは、企業にとって計り知れない損失です。
 

リスク3:手続きの不備による「信頼関係の毀損」

永住権の申請には、企業が発行する書類(在職証明書など)も必要です。もし、人事担当者が多忙を理由に対応を後回しにしたり、発行した書類に不備があったりした場合、審査がさらに遅延する原因となり得ます。
 
社員から見れば、「会社は自分の将来を応援してくれていない」と感じてしまうでしょう。このような些細なすれ違いが、従業員エンゲージメントを著しく低下させ、企業と社員の信頼関係にひびを入れるきっかけになりかねません。
 
 

人事担当者は何をすべき?永住権申請サポートの具体的な進め方

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リスクを理解した上で、次に行うべきは具体的な対策です。人事担当者として、以下のポイントを押さえておけば、慌てず適切に対応できます。
 

会社が準備すべき書類とよくある間違い

企業が準備を求められる主な書類は以下の通りです。それぞれの書類が「なぜ必要なのか」を理解しておくと、より丁寧な対応に繋がります。
 
  • 在職証明書: 申請者が現在、安定した職に就いていることを証明します。
  • 会社の登記事項証明書(履歴事項全部証明書など): 会社の存在と事業の安定性を公的に証明します。
  • 直近年度の決算報告書の写し: 会社の経営状況が健全であることを示します。
  • 法定調書合計表の写し: 会社が従業員の給与から所得税を適切に徴収・納税していることを証明します。
 
これらの書類を発行する際、記載内容が社員本人の申請内容と一致しているか、発行日が古すぎないか、といった基本的な点に注意するだけで、無用なトラブルを防ぐことができます。
 

どこまで関与する?税金・年金などプライベートな領域への適切な関わり方

永住権の審査で非常に厳しく見られるのが、税金(住民税など)や社会保険料(年金・健康保険)の納付状況です。
ここで人事担当者が悩むのが、「どこまで関与すべきか」という線引きでしょう。給与から天引きしている社会保険料とは異なり、住民税などは本人が直接納付するため、会社が支払い状況を完全に把握することはできません。
 
このようなプライベートな領域に対し、企業ができる適切なサポートは「情報提供」です。例えば、「永住権の審査では、住民税の納付証明書が必要になるので、滞納がないか確認しておくとスムーズですよ」といったアドバイスや、必要であれば専門家である行政書士への相談を促すといった関わり方が、プライバシーに配慮した適切な対応と言えます。複雑な問題ですので、担当者様が一人で抱え込む必要はありません。
 
 

「守り」から「攻め」の戦略へ。永住権サポートを人材定着に繋げるには

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ここまでは、リスクを回避するための「守り」の視点でお話してきました。しかし、永住権のサポートは、優秀な人材を惹きつけ、定着させるための「攻め」の戦略にもなり得ます。
 

企業が永住権サポートを行う3つのメリット

従業員の永住権取得を企業がサポートすることには、主に3つの大きなメリットがあります。
 
  • 従業員エンゲージメントの向上: 「会社は自分の人生を長期的に応援してくれている」というメッセージが伝わり、社員の会社への帰属意識や貢献意欲が格段に高まります。
  • 優秀な人材の長期的な定着(リテンション): 永住権という生活基盤の安定をサポートすることは、他のどんな福利厚生よりも強力なリテンション施策となり、競合他社への人材流出を防ぎます。
  • 労務管理コストの削減: 永住権が許可されれば、これまで数年ごとに行っていた在留資格の更新手続きが不要になります。これにより、人事担当者の事務的な負担と管理コストが大幅に削減されます。
 

究極のリテンション戦略としての「永住支援」

人手不足が深刻化する現代において、採用した優秀な外国人材にいかに長く活躍してもらうかは、多くの企業にとって重要な経営課題です。
 
永住権取得のサポートは、単なる事務手続きの手伝いではありません。それは、社員の人生に寄り添い、共に未来を築こうという企業の姿勢を示す、最も効果的な「戦略的投資」の一つです。他社がまだその価値に気づいていない今だからこそ、貴社の大きな強みとなり得ます。
 
外国人材の雇用や定着に関する課題全般については、以下の記事でも詳しく解説しています。
 
【2025年最新版】外国人を正社員として採用したい企業が知っておくべき5つの実務知識
 
 

まとめ:優秀な人材と長く働くために、企業ができること

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今回は、永住権の審査期間というテーマを「企業の人事担当者」の視点から掘り下げて解説しました。
 
  • 永住権の審査期間は1年前後かかるのが実態であり、その長期化は企業にとって「労務」「人材流出」「関係悪化」の3つのリスクをはらんでいること。
  • 企業は、在留期間の管理や書類準備のサポート、適切な情報提供を通じて、これらのリスクを回避できること。
  • そして、そのサポートはリスク回避に留まらず、社員のエンゲージメントを高め、人材定着に繋がる強力なリテンション戦略にもなること。
優秀な外国人社員から永住権の相談を受けたら、それは貴社にとってのリスクであると同時に、より強固な信頼関係を築くためのチャンスです。まずは、この記事を参考に、自社で働く外国人社員一人ひとりの在留期間を改めて確認することから始めてみませんか。その小さな一歩が、企業の未来を支える大きな力になります。
 
STAYWORKERでは、複雑な在留資格の管理から、外国人材の定着支援、永住権申請に関するご相談まで、専門的な知見を持つコンサルタントが企業様をサポートいたします。何から手をつければ良いか分からない、といったお悩みでも、どうぞお気軽にご相談ください。
 
 
執筆者:STAYWORKER事業部 / 益田 悠平
監修者情報:外国人採用コンサルタント / 堀込 仁志
株式会社USEN WORKINGの外国人採用コンサルタント。人材紹介・派遣の法人営業として多くの企業の採用課題に、そして飲食店経営者として現場のリアルに、長年向き合ってきた経験を持つ。採用のプロと経営者、双方の視点から生まれる具体的かつ実践的な提案を信条とし、2022年の入社以来、介護・外食分野を中心に数多くの企業の外国人採用を成功に導く。

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