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2025.06.27
特定技能制度
雇用関連
2025.12.03

【特定技能 採用】制度だけじゃ足りない!採用成功のために企業が本当に知るべき5つのこと

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目次

  1. 特定技能とは何か?
    • 特定技能の定義と目的
    • 特定技能の種類と特徴
  2. 特定技能外国人の受け入れ要件
    • 企業が満たすべき要件
    • 外国人が満たすべき要件
  3. 特定技能外国人の採用プロセス
    • ステップ1: 受け入れ条件の確認
    • ステップ2: 人材募集と選考
    • ステップ3: 雇用契約の締結
    • ステップ4: 支援計画の策定
    • ステップ5: 在留資格の申請
    • ステップ6: 就業開始
  4. 雇用後の手続きと義務
    • 外国人雇用状況届出
    • 四半期ごとの報告義務
    • 変更事由発生時の報告
  5. 特定技能外国人を採用する際の注意点
    • 日本語能力の確認
    • 協議会への加入
  6. 特定技能外国人の採用にかかる費用
  7. 特定技能外国人の採用成功事例
    • 成功事例1: 介護業界
    • 成功事例2: 製造業
 
はじめに
日本の多くの中小企業が抱える最大の課題――それは「人が足りない」という現実です。
少子高齢化が進むなか、製造、介護、外食、建設などの現場では慢性的な人材不足が続いています。どれだけ募集をかけても応募が集まらない、採用してもすぐ辞めてしまう…。そんな悩みを抱える企業が増える一方で、近年注目を集めているのが「特定技能外国人の採用」です。
 
特定技能制度は比較的新しい制度です。
人手不足が深刻な産業分野において、一定の技能や日本語能力を持つ外国人が即戦力として働ける仕組みとして導入されました。制度発足から5年が経過し、全国での在留者数は30万人を超える勢いで増加しています(出入国在留管理庁 2025年統計)。
いまや日本の労働市場において欠かせない存在となりつつあるのです。
この記事では、特定技能外国人の採用を検討している企業の方に向けて、制度の基礎から実際の採用ステップ、注意点、成功事例までを徹底的に解説します。
 

特定技能とは何か?

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特定技能の定義と目的

特定技能とはそもそも何なのでしょうか。
耳にしたことはあるけれど、その正確な定義は知らない人が多いかもしれません。
 
「特定技能」とは「在留資格」を指します。
 
深刻化する日本国内の人手不足に対応するため、2019年4月に創設されました。
人手不足は、我が国の経済・社会基盤の持続可能性を阻害しかねない深刻な社会問題になりつつあります。そのような人手不足を解消するという具体的な方針のもと、即戦力となる外国人を受け入れる仕組みを構築することを目的としているのです。国際貢献を目的としていた従来の技能実習制度と特定技能制度とでは目的部分での根本的な違いを感じますね。
 
ポイントは、国内人材の確保が困難だと指定された産業上の分野(特定産業分野)を対象としていることです。現段階では全部で16分野が指定されていますが、日常生活で想像がつきやすいものだと介護や建設、外食業分野等が挙げられます。
 
次の段落で詳しく説明しますが、特定技能には、一定の知識・経験を要する1号と、1号よりさらに熟練した技能を要する2号があります。技能水準に応じて、日本での滞在期間の長さや受け入れ企業による支援の必要性に段階的な違いを持たせるために分けられています。より技術を持つ特定技能2号の方が、1号よりも在留できる時間が長い、、といった風にですね。そのため外国人採用を持つ企業側は、外国人労働者に求める技能水準に応じて、どちらの特定技能を持つ人材を探すかを慎重に判断していく必要があります。
こちらについても後の段落で詳しく解説していきます!
 
原則として特定技能を得るためには試験合格が必要ですが、技能実習生のうち技能実習2号を良好に修了した方は、試験等を除く(免除される)ルートも用意されています。

特定技能の種類と特徴

「特定技能」には、特定技能1号と2号の2種類があります。
 
特定技能1号:
 相当程度の知識・経験を必要とする業務。
 対象は16分野で、在留期間は最長5年。
 企業側には生活支援などの義務があります。具体的には以下の16分野です。
 
対象16分野:
  • 介護
  • ビルクリーニング
  • 素形材産業
  • 産業機械製造業
  • 電気・電子情報関連産業
  • 建設業
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備業
  • 航空業
  • 宿泊業
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業
  • 林業(2022年追加)
  • 自動車運送業(2022年追加)
 
特定技能2号:
 熟練した技能を要する業務。
 在留期間に上限はなく、家族帯同(ご家族も一緒に来日し生活することです)も可能。
 2023年の制度改正で対象分野が大幅に拡大し、建設や製造業のほか外食業も追加されました。
 
対象11分野:
  • 建設業
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備業
  • 航空業
  • 介護(※今後追加予定)
  • 素形材産業
  • 産業機械製造業
  • 電気・電子情報関連産業
  • 宿泊業
  • 農業
  • 漁業
 
1号が「即戦力としての採用」であるのに対し、2号は「長期的なキャリア形成を見据えた採用」という位置づけです。
つまり企業にとっては、単なる人手確保ではなく、将来のチームづくりや技術承継の基盤となる制度なのです。
 
 

特定技能外国人の受け入れ要件

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企業が満たすべき要件

企業が特定技能外国人を受け入れるためには、法務省・出入国在留管理庁の定める基準を満たす必要があります。
特に重要なのは次の3点です。
 
法令遵守:労働基準法、社会保険、税金関連の法令に違反していないこと。
 
安定した雇用体制:継続的に雇用契約を履行できる体制を整えていること。
 
適正な報酬:同じ業務を行う日本人と同等以上の給与を支払うこと。
 
また、受け入れ企業は「1号特定技能外国人支援計画」を策定し、外国人が日本で安心して働けるように生活支援や日本語学習支援を行わなければなりません。
自社で対応が難しい場合は、登録支援機関に委託することも可能です。
 
株式会社として、外国人が快適に働ける受け入れ体制の整備も確保する必要があり、雇用契約を継続して履行できる体制の実現が求められます。
外国人労働者と日本人労働者との間で雇用形態に差異があってはいけません。報奨金は日本人が従事する場合の額と同等以上である基準を満たす必要があり、公正な評価体制の確保が不可欠です。また、過去1年以内に不適切な理由による離職者や行方不明者を発生させていないことなども大切な基準となってきます。
不当な契約(保証金徴収など)の締結は禁じられており、技能実習生との関係性においてもトラブルを防ぎ、公平な待遇を確保することが必要です。;

外国人が満たすべき要件

もちろん企業側だけでなく外国人労働者側が満たすべき要件もあります。
先に少しまとめておきます。
 
  • 日本語能力試験(JLPT N4相当)に合格していること
  • 各分野の技能試験に合格していること
  • 健康診断や身元保証など、入管庁が定める提出書類を準備していること
  •  
    まずは日本語能力の証明です。
    通常、生活や業務に必要な日本語能力(日本語能力試験N4レベル以上など)を試験で確認されます。
    次に、即戦力となるための技能水準を証明するため、各分野の特定技能試験の合格が必須です。これも技能実習2号からの移行以外のルートで該当します。
    また、雇用契約後に健康状態の確認として健康診断の受診が義務付けられています。外国からの新規入国や在留資格変更の手続きを経てビザ(在留資格)を取得する際は、これらの証明書類を含め、多くの書類を提出します。特定技能1号と2号では、求められる技能水準や日本語要件などが異なる点に留意が必要です。申請前には労働条件などについて対面またはテレビ電話での事前ガイダンスを受ける必要があります
    なお、技能実習2号を良好に修了した場合は、試験が免除される特例があります。
    この仕組みにより、実習で培った経験をもとに特定技能としてキャリアを継続する人が増えているみたいですね。

    特定技能外国人の採用プロセス

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    ステップ1: 受け入れ条件の確認

    特定技能外国人の受け入れを円滑に進めるため、受け入れ条件の確認」は非常に重要です。
     
    具体的には、前述した企業側の要件を再チェックします。自社の事業が法務省指定の16分野に該当し、外国人に従事させる予定の業務内容がその分野の範囲内かどうかをまず確認しましょう。例えば製造業の中でも素形材産業や電気電子情報関連といった細かな分類がありますので、自社業務が該当しているか入管庁の公表資料で確認が必要です。
     
    次に自社の法令順守状況を点検します。こちらも先ほお企業要件の記事で触れましたが、労働基準法や社会保険関連法令、入管法などに違反歴がないか、直近1年以内に技能実習生の失踪や特定技能外国人の解雇(自己都合以外)が発生していないかなどを確認します。
    また、雇用契約を安定的に履行できる経営基盤があるか、外国人が働きやすい職場環境を整備できるかも重要なチェックポイントです。必要に応じて就業規則の多言語化やハラスメント防止体制の強化など、受け入れ前に社内体制の整備も進めましょう。
     
    採用予定の人材に求める資格・スキルを明確化しておくことも大事です。特定技能1号では基本的に技能試験と日本語試験の合格が必要ですから、候補者がそれらに対応できるかを見極める必要があります。自社に適した人材像(例えば日本語コミュニケーション重視なのか、技能熟練度重視なのか)を社内で擦り合わせたりして、選考基準を事前に設定しておくと、この後の募集・面接がスムーズになります。
     
    またこの段階で、登録支援機関を利用するかどうかも検討しておきます。
    自社で支援業務を行う場合は前述の要件を満たす必要がありますし、外部委託する場合は予算確保と適切な機関選定が必要です。難しい場合は頼る方向性も検討してみましょう!
    いずれにせよ、支援計画の策定準備も早めに進めておくと良いと思います。
    以上の事前準備を丹念に行うことで、後の手続き段階でのトラブルを未然に防ぎ、スムーズな採用活動につながります!

    ステップ2: 人材募集と選考

    受け入れ条件の確認が済んだら、いよいよ外国人材の募集と選考に移ります。まずは社内で決めた採用条件に基づき、求める人材像と言語・技能要件を明文化しましょう。例えば「日本語能力N4以上」「調理経験3年以上」など具体的な基準を設定し、公平な評価基準を用意します。長期的に戦力化できるかという視点も忘れずに、単なる経験値だけでなくポテンシャルも考慮するとよいでしょう。
     
    募集方法は多様に検討します。一般的に、特定技能人材の採用では民間の人材紹介会社(職業紹介事業者)を利用するケースが多く見られます。人材紹介会社を活用すれば企業の手間が大きく削減でき、マッチング精度も高いため最も一般的な方法とされています。例えば、候補者の日本語力やスキルの事前確認、在留資格取得手続きのサポート、さらに入社後の支援までワンストップで行うなど、初めて外国人採用を行う企業にとって心強いパートナーとなる企業は存在します。
     
    紹介会社以外にも、求人広告や公的機関の活用があります。外国人向け求人サイトや多言語対応の求人媒体に募集を出す方法、ハローワークや外国人雇用サービスセンターに求人登録する方法などです。求人情報を作成する際は、業務内容・給与・勤務時間など労働条件をできる限り詳細かつ明確に記載し、入社後のミスマッチを防ぐことが重要です。応募が来たらできるだけ迅速に対応し、オンライン面接の案内や内定までのフォローを丁寧に行うことで、モチベーションの高い人材を逃さず確保しやすくなります。
     
    SNSやスカウトサイトを使ったダイレクトリクルーティングも効果的です。
    例えばLinkedInやFacebookの在日外国人コミュニティ、海外の人材プラットフォームで情報発信し、興味を持った候補者にアプローチする方法です。社内の雰囲気や働く様子を写真や動画で紹介すると、応募前に不安を和らげることができます。近年は現地の送り出し機関と連携してオンライン面接会を開催する企業もありますので、自社に合った手法を選びましょう。
     
    選考プロセスでは、書類選考→面接・技能テストという流れが一般的です。
    面接時には仕事内容や待遇を正確に伝え、認識のギャップを無くす工夫が必要です。例えば日本語に自信がない候補者には通訳を同席させる、図や写真を用いて視覚的に説明する、といった配慮が有効ですね。
     
    内定後、正式な雇用契約の締結に移ります。契約書は外国人労働者が内容を十分理解できるよう母国語と日本語の併記で作成し、労働条件を明示します。契約内容は労働基準法などに適合し、報酬額は同じ仕事をする日本人以上でなければなりません。また、特定技能外国人には転職の自由も認められているため、企業側が一方的に不利にならないよう期間や条件も明確に定めます。
     

    ステップ3: 支援機関との連携(支援計画の策定)

    特定技能1号で外国人を受け入れる企業には、事前に支援計画を策定する義務があります。支援計画とは、外国人労働者が日本で安定して働き生活できるように企業が講じるサポート内容をまとめたものです。具体的には前述の10項目の支援(住居確保、生活オリエンテーション、日本語学習支援、相談対応、定期面談など)をどのように実施するかを計画書に落とし込みます。この計画書は在留資格申請時に提出が必要であり、計画どおりに支援を行う責任が企業に課せられます。
     
    支援計画を策定する際、登録支援機関との連携を検討しましょう。自社で全ての支援を担うことが難しい場合、法務省に登録された外部の支援機関に支援業務を委託できます。登録支援機関は外国人支援のプロであり、生活ガイダンスから役所手続き同行、定期面談の実施や入管への各種報告作成まで代行してくれます。委託費用は一般に月額2万~3万円程度が相場ですが、その分、企業は本業に専念できるメリットがあります。例えば株式会社ステイワーカーのように特定技能外国人の支援業務に実績のある登録支援機関に依頼すれば、日常生活面のサポートからトラブル対応まで安心して任せることができるでしょう。
     
    自社で支援を行う場合でも、多言語対応の体制を準備することが求められます。外国人本人が理解できる言語でガイダンスや相談対応ができるよう、社内に翻訳者や通訳できるスタッフを配置するか、オンライン翻訳サービスを活用するなどの工夫が必要です。また、支援責任者・担当者を決め、受け入れ初日から定期フォローアップまで一貫して面倒を見る体制を整えます。計画段階で想定外の課題(宗教上の配慮や食生活の違いなど)が見えてきたら、都度協議会や支援機関に相談しながら対応策を盛り込みましょう。
     
    2024年の制度改正でも支援体制の充実が強調されており、オンライン面談の活用や支援記録の適正管理など運用面のガイドラインも示されています。特定技能外国人を受け入れる企業は、「採用したら終わり」ではなく「採用してからが本番」という意識で、入国前から支援計画を立てておくことが成功の鍵となります。
     

    ステップ4: 在留資格申請(ビザ取得手続き)

    特定技能1号の「支援計画の策定」は、外国人材が安定的かつスムーズに働ける環境を整えるための非常に重要な計画ステップです。この計画は、業務面だけでなく日常生活面でのサポートを含む具体的な支援内容を具体化するために策定されます。在留資格申請の準備として、支援計画書を提出する必要があり、支援の内容には、住居確保、生活オリエンテーション、公的手続き等への同行が含まれます。
     
    特に、文化・生活支援を考慮し、外国人が十分に理解できる言語で支援を実施できる体制の準備が求められます。また、定期的なフォローアップを計画することが必須であり、担当の支援責任者や担当者が3ヶ月に1回以上、外国人本人とその上司等と定期的な面談を実施しなければなりません。
    2024年の制度運用においても、この計画の実施は義務であり、企業側の希望に応じて、支援の実施の全部または一部を登録支援機関に委託することも可能です。このステップを経て、目次で示される次のステップである在留資格申請へと進みます。
     

    ステップ5: 在留資格の申請

    採用する人材が決まり支援計画の準備も整ったら、在留資格の申請を行います。海外に在住している外国人を新規に呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請(COE申請)」を、すでに日本に在留する留学生や技能実習生を採用する場合は「在留資格変更許可申請」を地方出入国在留管理局に提出します。申請には先述の契約書写し、支援計画書、技能試験合格証明、日本語試験合格証明(または技能実習修了証明)など多数の書類が必要です。また、企業側の納税証明や役員に関する誓約書、協議会加入証明なども求められます。提出書類に不備や記載漏れがあると受理されず手続きが大幅に遅れるため、慎重に準備しましょう。
     
    入管への審査には通常1~3ヶ月程度を要します。特に海外からのCOE申請は企業適格性や支援体制も含めて審査されるため、平均2~2.5ヶ月ほどかかるのが一般的です。一方、日本国内での在留資格変更申請は比較的早く、2週間~1ヶ月程度で結果が出るケースが多いです。いずれにせよ、申請後は入管からの連絡を待ちつつ、追加書類要請などに迅速に対応できるよう備えておきます。
     
    審査期間中にできることとして、例えば外国人が来日前にオンラインで日本語研修を受けられるよう手配する、社員向けに外国人受け入れ研修(多文化理解研修)を実施する、といった準備があります。ビザ許可が下り、在留資格認定証明書が交付されたら、海外採用の場合は現地の日本大使館・領事館で査証(ビザ)発給手続きを経て来日となります。来日時の空港出迎えや入居先手配など、入国直後に必要なサポートも忘れずに準備しましょう。
     
    費用面では、在留資格申請にかかる入管庁への手数料は一件あたり4,000円(収入印紙代)です。
    企業が行政書士など専門家に申請代行を依頼する場合、その報酬は通常10万~20万円程度が相場です。書類の翻訳費用や健康診断書取得費用なども発生しますが、これらは必要経費と割り切り、正確な申請手続きを行うことが長期的な安定雇用への先行投資だと考えましょう。もし申請内容に不備があれば許可が下りず最初からやり直しになってしまいますので、プロの力も借りながら万全を期すことをお勧めします。
     
    無事に在留資格が交付されたら、外国人労働者はいよいよ就業開始となります。初出勤日に改めて労働条件の再確認を行い、日本人社員と同等の待遇であることや職務内容を再度説明しましょう。オリエンテーションも兼ねて職場のルールや安全指導を実施し、日本人社員との交流の場を設けて受け入れを円滑にします。例えば社内歓迎会や先輩によるメンターメソッドを導入することで、新人外国人が孤立せずチームに馴染めるよう配慮します。
     
    このように、採用前から在留資格取得・入社に至るまで多くのステップがありますが、一つひとつ丁寧に対応することで特定技能外国人の受け入れは着実に進められます。では、実際に雇用が始まった後の企業側の義務と注意点について確認しておきましょう。
     
     

    雇用後の手続きと義務

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    外国人雇用状況届出

    国内で外国人を雇用または離職させる際、「外国人雇用状況の届出」は、全ての事業主に義務付けられている重要な手続きです。これは、労働施策の総合的な推進に関する法律(労働施策総合推進法)に基づき、人手不足の解消に向けた適切な外国人雇用の管理、不法就労の防止、そして離職した外国人への再就職支援などを目的としています。この届出の対象者は、「外交」「公用」「特別永住者」を除く、短期滞在や外交等を除く国内で働く全ての外国人労働者であり、雇用形態にかかわらず提出が必要です。
     
    この手続きは、採用した外国人をハローワークに雇用保険の届出をする際に、併せてその外国人の氏名・在留資格・在留期間などを報告する形で行われます。届け出先は事業所を管轄するハローワークです。提出期限は、雇用保険の被保険者となる場合は雇入れ日または離職日の翌月10日まで、被保険者でない場合は翌月末日までと、ケースによって異なります。外国人が退職した場合も同様に届出が必要です。
     
    届出内容には、外国人の氏名、国籍、在留資格、在留期間、給与に関する事項など、正確な情報を記載する必要があります。特に、出入国管理上の在留カード等で確認した正確な情報を記載することが極めて重要です。また、国外に住む海外人材を採用する際には、労働条件の明確な明示も求められます。適正な届出と雇用管理は、苦情の発生を防ぎ、外国人労働者が能力を発揮できる環境づくりにつながります。
     
    万一、この届出を怠ったり虚偽の報告をした場合、事業主には30万円以下の罰金が科される可能性があります。適正な届出を行い、国に外国人雇用者数を把握させることは、不法就労の防止や再就職支援施策にもつながる重要な責務です。厚生労働省も届出情報を基に企業への助言・指導を実施していますので、法令遵守のためにも、確実に提出できるよう社内でルール化し、徹底しておきましょう。
     

    四半期ごとの報告義務

    これまで特定技能所属機関(受け入れ企業)には、四半期ごと(3ヶ月に1回)の定期報告が義務付けられていました。具体的には、毎四半期終了後に受け入れている特定技能外国人の就労状況や支援実施状況について入管庁へ報告書を提出し、企業が引き続き適格性を保っているか確認を受ける仕組みです。
    報告内容は、外国人ごとの勤務状況(職種や勤務日数・時間、支援の実施記録など)が中心で、所定の様式にまとめます。提出にはそれぞれ定期面談(3ヶ月に1度の本人面談)の実施が前提となるため、企業は少なくとも四半期に一度は特定技能社員と面談し、生活・就労上の問題点を聞き取る必要がありました。
     
    しかし2025年以降、この定期報告制度は年1回制に緩和される予定です。2025年4月15日までの四半期報告を最後に、次回以降は毎年4~5月に年次報告を行う方式へと移行します。これは企業の事務負担軽減を図る運用改善策で、現在すでに一部施行されています。とはいえ年1回の報告でも必要事項を漏れなくまとめることが重要です。報告漏れ・虚偽報告は引き続き罰則対象となりますので、担当者は最新の入管庁通知を確認し、適切に対応しましょう。
     

    変更事由発生時の報告

    外国人雇用における適切な管理のため、事業主には雇入れや離職の際だけでなく、届出内容に変更が生じた状況においても、関連窓口への相談や報告・提出が求められます。
     
    例えば、事業所を移転・統合・廃止した、あるいは外国人労働者本人の在留資格が変更になったといった理由で届出内容の変更が生じた場合、事業主は速やかにハローワークなどの窓口に相談し、対応することが必要です。また、労働条件に変更がある際は、その概要を外国人労働者が理解できるよう、書面などで明確に明示することが、法令遵守と適切な雇用管理に直結します。
     
    特に特定技能外国人の雇用においては、定期報告以外にも状況に応じた随時届出が義務付けられています。例えば、特定技能外国人が自己都合退職した、解雇した、あるいは転職して他社へ移籍したといった事実や、企業側の事情で事業所の名称や所在地が変わった場合、支援を委託していた登録支援機関を変更した場合などは、その都度、速やかに**入管(出入国在留管理庁)**へ届け出なければなりません。もちろん、特定技能外国人を新たに雇い入れたり雇用契約を更新したりした際にも、入管への報告義務が発生します。
     
    これらの随時届出はすべて法律上の義務であり、怠ったり虚偽の届出をしたりすると、30万円以下の罰金が科されるリスクがあります。これは外国人本人やその後の新たな人材受け入れにも関わる重要な手続きです。
     
    要約すれば「採用した後も、変更が生じたら決められた報告を怠らない」ことが肝要です。外国人労働者が安心して働き続けられる環境を整えるためにも、社内で外国人雇用の管理台帳を作成し、報告スケジュールを管理するなど、企業としてのコンプライアンス遵守を徹底しましょう。変更が生じたら、まずは入管やハローワークへ速やかに相談・届出を行うことを習慣づけてください。
     
     

    特定技能外国人を採用する際の注意点

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    日本語能力の確認

    特定技能では最低限の日本語力が要件とされますが、実際の業務で発揮できるかどうかは別問題です。試験合格=即戦力の日本語力とは限らないため、採用時にはコミュニケーション力をしっかり見極める必要があります。面接では日本語で質問し、日本語で答えてもらう場面を設けて実力を評価しましょう。また、現場で使う専門用語や略語が理解できるかも確認ポイントです。たとえば介護分野なら「バイタル測定」や「嚥下(えんげ)」といった用語、外食なら「上がり(勤務終了)」や「まかない(賄い食)」など、業界特有の言葉があります。それらをクイズ形式で質問してみるのも良いでしょう。
     
    もちろん、日本語能力が高いに越したことはありませんが、採用後に伸ばすことも可能です。重要なのは学習意欲の有無です。入社前に日本語学校に通っていたか、日常的に日本のドラマやニュースを見て勉強しているか、といった点からモチベーションを感じ取れます。採用後も継続学習してもらえる人材かどうかを見極めることが大切です。
     
    入社後は、言葉の壁によるミスやストレスを減らす工夫をしましょう。例えば業務マニュアルをやさしい日本語に書き換えたり、図解や写真を多用したりすることで理解度が上がります。日常会話レベルの日本語しかできない段階では、重要な指示は母国語に翻訳した文書でも渡す二重対応が望ましいです。また、定期的に日本語教師を招いて社内レッスンを開く企業もあります。日本語習得を支援する姿勢を示すことで、外国人社員の「もっと上達したい」という意欲も高まるでしょう。
     

    協議会への加入

    特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)には、特定産業分野ごとに設けられている協議会への加入が義務付けられています。この協議会は単なる形式的な団体ではなく、企業が特定技能制度を適正に運用し、外国人材を効果的にサポートするための重要な情報源であり、相談先でもあります。
     
    協議会は、法令や制度変更への迅速な対応と、適正な雇用管理を行うために不可欠な存在です。例えば、協議会が主催する定例会では、最新の法令改正情報や他社の受け入れ事例共有、外国人支援のノウハウ紹介などが行われます。ここで得た知見を自社の実務に活かすことで、問題発生を未然に防ぐ予防策を講じることができます。協議会との定期的な情報共有は、不法就労リスクを避け、外国人材が安心して働ける環境を整えるために極めて重要です。
     
    また、協議会は、義務的支援の一つである外国人への事前ガイダンス(講習)の実施も支援しています。多くの協議会では、入国前または入国直後の外国人に対し、日本で働く上でのルールや生活一般について説明する場を設けており、企業単独で行うよりも効率的です。外国人側にとっても、同郷の仲間と一緒にガイダンスを受けることで安心感が生まれ、質問もしやすくなるという利点があります。さらに、地域情報の一覧提供や生活同行支援など、具体的な相談や対応を通して雇用主をサポートしています。
     
    さらに、協議会への参加は行政への窓口として機能します。制度運用上の疑問や、支援計画の作り方など困ったことがあれば、協議会事務局や担当官に問い合わせることができます。制度変更が検討されている場合も、協議会を通じて速報や企業向けの説明会が開かれます。実際、2023年末に技能実習制度から「育成就労制度」への移行方針が打ち出された際も、各協議会で情報共有が行われました。
     
    このように、協議会は企業と国・自治体・支援機関を結ぶ情報ハブであり、外国人採用、特に特定技能では、その役割理解と活用が不可欠です。
     
     

    特定技能外国人の採用にかかる費用

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    1人の特定技能外国人を受け入れる際の費用は、大きく初期費用と継続費用に分けられます。
    紹介手数料(採用初期費用):民間紹介会社を利用した場合、25万~60万円程度が相場です。理論年収の15~30%とも言われ、国内在住者を採用する場合はやや低め(20万~40万円)になるケースもあります。技能実習からの移行組を採用する場合は紹介料がかからないこともあります。
     
    • 在留資格申請費用(初期費用):入管への手数料4,000円の他、行政書士等に依頼すれば10万~20万円ほどが目安です。自社で手続きするなら印紙代程度ですが、書類準備に相当の時間がかかる点を考慮しましょう。
    •  
    • 登録支援機関委託料(継続費用):支援委託する場合、月額1.5万~4万円程度がランニングコストとしてかかります。平均相場は約2万8千円とも言われ、雇用期間中ずっと発生します。自社で支援する場合はこの費用は不要ですが、その分の人的リソースとノウハウが必要になります。
    •  
    • 渡航費・初期生活費(初期費用):航空券代や入国時の空港送迎費、入居時の敷金礼金・家電購入などに5万~30万円程度かかります。企業がどこまで負担するか就業規則で定めておくと良いでしょう。
    •  
    • その他経費:雇用する際の健康診断費用、日本語研修費、作業着や安全靴など備品費用も見込んでおきます。これらはケースバイケースですが、1人あたり数万円程度を見積もっておけば安心です。

    以上を合計すると、例えば海外から現地採用するケースでは初期費用40~110万円+月額3~4万円程度が一般的な目安になります。国内在住者を採用する場合は初期費用が半分程度(20~45万円)で済むこともあります。建設業のように分野独自の費用(受け入れ事業計画の認定料や協会負担金)が発生する場合もありますが、その場合でも公的補助が用意されていることがあります。
    重要なのは、これら費用を単なるコストではなく将来への投資と考える視点です。外国人材が戦力となり定着してくれれば、生産性向上や離職率低下による効果で元が取れるでしょう。むしろ安易に低コストで済まそうとして十分なサポートを怠れば早期離職に繋がり、結果的に損失が大きくなります。必要な費用は惜しまずかけ、長期的なリターンを目指す姿勢が肝心です。
     

     

    特定技能外国人の採用成功事例

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    最後に、特定技能外国人の受け入れに成功している企業の事例を業界別に紹介します。それぞれ定着率向上や戦力化に結びついたポイントを見てみましょう。
     

    成功事例1: 介護業界

    日本人の人手不足が最も深刻と言われる介護業界では、特定技能外国人の採用が各地の介護施設で進んでいます。東京都内のある中規模介護施設では、ベトナム人・インドネシア人計8名の特定技能介護人材を受け入れました。同施設が工夫したのは、配属前の1週間オリエンテーションです。入社後すぐ現場に出すのではなく、まず1週間かけて日本語や介護専門用語の研修、施設のサービス理念共有などを行いました。また、日本人の先輩職員が「バディ(ペア)制度」で新人外国人をマンツーマンで指導し、業務に慣れるまで付き添いました。
     
    さらに生活面のサポートとして、社員寮を整備し週に1度は地元ボランティアとの交流会を実施するなど、地域に溶け込める工夫もしました。その結果、この施設では初年度の定着率100%を達成し、利用者からも「外国人スタッフはとても丁寧で親切」と高評価を得ています。この事例から学べるのは、入社直後の手厚いフォローと受け入れ側・地域の協力体制が定着に大きく寄与するという点です。特定技能外国人を戦力化するには、最初の数ヶ月が勝負と言えるでしょう。
     
    統計的にも、特定技能介護職の自己都合離職率は年間約10.6%(制度開始3年半で10.6%の累積)と日本人介護職員より低水準で推移しているとの報告があります。良い事例では定着率96%(3年で10名中9名継続勤務)という施設もありました。こうした成功施設はいずれも外国人が働きやすい環境整備に注力しています。明確な業務マニュアル(図解付き)の整備、月1回の1対1面談による不安の早期発見、メンター制度による相談相手の付与、そしてキャリアパスの明示(介護福祉士取得支援など)といった取り組みで、高い定着率を実現しています。介護業界において外国人材は欠かせない戦力となりつつあり、組織として受け入れる姿勢と仕組み作りが成功の鍵となっています。

    成功事例2: 製造業

    製造業界でも特定技能外国人が各地の工場で力を発揮しています。ある金属加工メーカーでは、タイやインドネシア出身の特定技能1号を複数名受け入れ、計画的に多能工(マルチスキルワーカー)へ育成しました。最初は旋盤オペレーターとして採用した外国人に、半年後には溶接資格取得を支援し、さらに1年後には品質検査工程も担当させる、といったようにジョブローテーションを積極的に行ったのです。これにより、一人で複数工程をカバーできる多能工化が進み、現場の柔軟な人員配置が可能になりました。
     
    同時に、ベテラン日本人職人による技能伝承を目的とした師弟制度も導入しました。外国人社員一人ひとりに指導担当の日本人先輩を割り当て、業務時間内に週1回はマンツーマンで高度技能の指導を行いました。例えばNC工作機械のプログラミングや、不良品の原因究明手法など、一歩踏み込んだ知識まで教え込んだのです。その成果もあって、受け入れから3年経った現在、外国人社員はリーダークラスとなり新たな後輩外国人・日本人の両方を指導する側に回っています。まさに現場での技術継承が実現した形です。
     
    このメーカーでは、日本人だけでは敬遠されがちだった夜間シフトも外国人社員が主体となって回せるようになり、結果として24時間操業による生産性向上につながりました。また、技能が向上した外国人には特定技能2号への移行を促し、長期雇用を前提に家族帯同ビザ取得の支援も行っています。長く働いてもらう前提で技能投資を惜しまない姿勢が、製造現場の戦力強化と技術の社内蓄積に寄与した好例と言えるでしょう。
     
    統計を見ると、製造業系(素形材・産機・電気電子)分野の特定技能外国人は2023年末で約4万人と前年から大幅増加しており、各企業が即戦力性と定着性の両面から外国人材を活用し始めていることが分かります。技術系の現場では日本語と専門知識が求められるためハードルもありますが、意欲の高い人材ほど伸びしろがあります。成功事例のように、企業が主体的に教育訓練とキャリアアップの道筋を用意すれば、外国人材は期待以上に応えてくれるでしょう。
     
    最後に長くなりましたが、特定技能制度は制度を活かしてこそ真価を発揮します。単に枠があるだけでは成功は難しく、企業が主体的に学び、準備し、行動することが求められます。本記事で述べてきたように、制度の理解と適切な運用、そして人材を長期的に育成する視点を持って臨めば、特定技能外国人の活躍は必ずや企業に大きな利益と変化をもたらすでしょう。専門サービスもうまく利用しながら、ぜひ自社の未来を担うグローバル人材を迎え入れてみてください。

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