
人手不足が深刻化する日本で、ベトナム人材の採用が解決策の一つだと分かってはいるものの、「制度が複雑そう…」「手続きが大変なのでは?」「文化や習慣の違いでトラブルにならないか」といったご不安を抱えていませんか? せっかく採用しても、すぐに辞めてしまわないか、費用ばかりかさんで失敗しないか…そんな心配は尽きないでしょう。
本記事は、そうした初めてベトナム人採用を検討される人事担当者や経営者の皆様のために、特定技能制度の全体像から、具体的な手続き、費用、そして採用成功と定着の鍵となるポイントまでを、専門的な知見に基づきながらも、分かりやすく丁寧に解説します。
目次
なぜ今、ベトナム人採用が企業に選ばれるのか?
近年、日本企業にとってベトナム人材の採用は、人手不足解消の重要な選択肢となっています。その背景には、ベトナム人の日本における存在感の増大と、彼らが持つ魅力的な特性が挙げられます。
■日本に在留するベトナム人の現状と増加の理由
最新の出入国在留管理庁の発表によると、2024年末時点での在留ベトナム人数は約52万人に達し、引き続き中国に次ぐ第2位の国籍となっています。これは、日本で働く外国人の約4人に1人がベトナム人であるという調査結果(出典:
外務省「海外在留邦人数調査統計」2022年6月時点)からさらに増加傾向にあることを示しています。
この増加の背景には、主に以下の理由があります。
- 母国の賃金水準と経済的理由: ベトナムの平均月給は、日本の4分の1程度とされており、経済的な理由から日本で働くことを希望する若者が多くなっています。
- 日本とベトナム政府間の良好な関係: 両国政府間の協力関係が強く、人材交流を後押しする政策が推進されています。
これらの要因により、今後も日本で活躍するベトナム人材は増加していくと見られます。
■ベトナム人材が持つ3つの魅力
ベトナム人材が多くの日本企業に選ばれるのは、単に人手不足を補うためだけではありません。彼らが持つ以下のような特性は、企業の成長に大きく貢献する可能性があります。
- 若く、勤勉で学習意欲が高い
ベトナムは平均年齢が若く、人口構成の22.7%を15〜30歳が占めています。これは日本の14.0%と比較しても非常に高く、若くエネルギッシュな労働力を確保できるという大きなメリットがあります。彼らの学習意欲の高さは、スポンジが水を吸うように新しい知識やスキルを吸収する能力に例えられます。適切な指導を行えば、責任感を持って業務を正確に遂行する能力を期待できるでしょう。
- 日本人との相性が良い
電通の調査によると、「日本がとても好き・まあ好き」と答えるベトナム人の比率は他の国に比べて最も高いという結果が出ています。また、大多数が無宗教であるため、宗教上のタブーによる文化的な摩擦が少ない点も、外国人採用が初めての企業にとっては安心材料となります。
- 手先が器用で、サービス精神が旺盛
ベトナム人は勤勉で真面目な国民性を持つ一方で、手先が器用で、細やかな作業を得意とします。これは、製造業など精密な作業が求められる分野で特に重宝されます。また、人懐っこく、明るい雰囲気を好む傾向があるため、接客や介護など人と接する機会の多いサービス業にも適しています。
特定技能ベトナム人採用の全貌
ベトナム人材の採用を検討する上で、特定技能制度の全体像と、日本側・ベトナム側双方の手続きを理解することは不可欠です。
■特定技能制度の全体像とベトナム人材の動向
特定技能制度は、国内の人手不足を補うために2019年に創設された在留資格です。特定の産業分野で即戦力となる外国人材を、長期的に確保することを目的としています。技能実習制度と異なり、最初から就労を目的としているため、即戦力としての活躍が期待できる点が大きな特徴です。
特に注目すべきは、特定技能におけるベトナム人の割合の高さです。最新の出入国在留管理庁の統計データによると、2024年末の時点で、特定技能外国人の約55%がベトナム人となっており、その比率はさらに高まっています。これは、特定技能制度がベトナム人材の重要な受け皿となっていることを示しており、今後もその存在感は増していくと見られます。
■採用担当者が知るべき、日本側とベトナム側の二重構造
ベトナム人を特定技能で採用する場合、日本の入国管理局への申請手続きに加えて、ベトナム政府が定める手続きも必要になります。この二つの手続きを円滑に進めることが、採用成功の鍵となります。
ベトナム政府が定める重要なルールの一つが、「推薦者表」です。これは、ベトナム人労働者の技能や経験を証明する書類で、ベトナム労働・傷病兵・社会問題省(DOLAB)から認定を受けた「送り出し機関」を通じて発行されます。推薦者表は、ベトナム政府が「この人は日本で働く準備ができていますよ」とお墨付きを与えるパスポートのようなものです。これがないと、日本の在留資格変更許可申請が認められないため、注意が必要です。
また、ベトナム人労働者を日本に派遣するためには、ベトナムの「新海外労働者派遣法(Law No.69/2020/QH14)」等の法律・政令・通達に基づく手続きが必要です。特に、日本企業がベトナムに現地法人を設立して、送り出し事業を直接行うことはできません。このため、必ずDOLABから認定を受けた信頼できる送り出し機関と協力することが、法的に安全な採用活動を行う上で不可欠となります。
■採用までの具体的な手続きの流れ
ベトナム人(日本国内在留者)を特定技能で雇用する際の一般的な流れは以下の通りです。
- 特定技能に関する雇用契約の締結
- 推薦者表の承認と発行(ベトナム側)
- 在留資格変更許可申請(日本側)
- 在留カードの交付、就労開始
この一連の流れは、慣れていないと非常に煩雑に感じられます。特に、在留資格の変更申請には書類が100ページ以上にも及ぶと言われており、不備があれば審査が長引く、最悪の場合は不許可になるリスクも伴います。「手続きでミスをして、せっかくの採用計画が白紙に戻ったらどうしよう…」という点は、ご不安に思われますよね。専門家への依頼を検討するのが賢明でしょう。
採用担当者が知っておくべき「費用」を徹底解説
ベトナム人採用には、どのような費用がかかるのでしょうか。ここを明確にすることで、資金計画の不安を解消します。費用は「初期費用」と「ランニングコスト」に大別されます。
■採用にかかる初期費用の内訳
海外から人材を招へいする場合と、国内に在留している人材を雇用する場合とで、初期費用は大きく異なります。
海外から採用する場合
- 人材紹介料: 1名あたり10万〜30万円が相場です。
- 送り出し機関への手数料: 1名あたり15万〜60万円が相場です。この費用には、日本語や技能の教育費用が含まれます。
- 在留資格申請代行料: 行政書士に依頼する場合、1名あたり10万〜20万円が相場です。
- 渡航費用・移動費用: 渡航費(3万〜6万円)や、空港から住居までの移動費用(1万〜2万円)は、受入れ企業が負担する必要があります。
国内から採用する場合
- 人材紹介料: 1名あたり30万〜60万円が相場となります。渡航費などがかからない分、初期費用は低くなることが多いです。
- 在留資格変更申請代行料: 1名あたり10万〜20万円が相場です。
これらの費用の他にも、自社で手続きを行う場合には、担当者の人件費という「見えないコスト」が発生します。煩雑な書類作成や手続きに費やす時間と労力を考慮すると、専門サービスを利用することが、結果的に費用対効果を高めることにつながる場合も少なくありません。
■雇用後のランニングコスト
特定技能人材を雇用した後のランニングコストとしては、主に以下の費用が挙げられます。
- 登録支援機関への支援委託料: 1名あたり月額2万〜3万円が相場です。
- 在留資格更新申請代行料: 特定技能の在留資格は1年ごとに更新が必要です。行政書士に依頼する場合、1名あたり6万〜10万円が相場です。
登録支援機関とは?人事担当者が失敗しない選び方と総額費用、新制度を徹底解説
採用担当者が知っておくべき3つの「注意点」と解決策
ベトナム人採用を成功させるためには、彼らの文化や考え方を理解し、ミスマッチを未然に防ぐことが非常に重要です。
■勤勉な一方で、文化的な「壁」は存在する
ベトナム人は勤勉で真面目ですが、日本人とは異なる文化や習慣を持っています。例えば、「ベトナム時間」という言葉があるように、時間に対する感覚が日本人に比べて少しゆったりしている傾向があると言われています。
また、日本では「報告・連絡・相談(報連相)」が重要視されますが、ベトナムでは意見をはっきりと述べることを美徳とする文化があり、「言われなくても察する」という日本特有のコミュニケーションが通じない場合があります。日本の「言わなくても察する」文化は、ベトナム人にとっては「空気の読めない指示」と受け取られかねません。まるで異なる言語を話すように、明確な言葉で伝えることが重要です。
こうした文化の違いは、当初は小さな食い違いであったとしても、放置すると「ベトナム人は決めた手順を守らない」「意識が低い」といった不満に繋がり、大きなトラブルに発展する可能性があります。
【解決策】
採用後のオリエンテーションや研修で、日本のビジネスマナーや報連相の重要性を丁寧に伝え、お互いの文化を理解する機会を設けることが大切です。定期的な面談で、疑問や不安を解消できる場を作ることも有効でしょう。
■ キャリアと給与への高い意識
「お金を稼ぎたい」という明確な目標を持って来日するベトナム人労働者は多く、給与やキャリアアップに対する意識が非常に高い傾向にあります。転職経験者の74%が転職理由に「給料の低さ」や「仕事内容とキャリアのギャップ」を挙げている調査もあります。
彼らは自身のスキルアップや将来の展望を重視するため、日本の年功序列制度は好まれない傾向にあります。
【解決策】
彼らが仕事で達成すべき目標や、将来のキャリアパス、そしてそれが給与にどう反映されるのかを明確に伝えることが重要です。定期的な評価制度を導入し、実績に応じた昇給・昇格の機会を設けることで、モチベーションを維持し、長期的な定着に繋げることができます。
■ 慣れない制度や手続きによる「失敗」のリスク
外国人雇用が初めての企業にとって、特定技能の申請手続きは非常に複雑に感じられます。不慣れなために書類に不備があり、申請が不許可になってしまうケースも少なくありません。「手続きでミスをして、せっかくの採用計画が白紙に戻ったらどうしよう…」というご不安に思われますよね。こうした手続き上の失敗は、時間と費用の無駄だけでなく、企業の信用にも関わる重大なリスクです。
実際に、手続きの複雑さから申請が不許可になり、採用計画が大幅に遅れたケースも耳にします。
【解決策】
特定技能に精通した専門家や信頼できる支援機関に依頼することで、リスクを回避し、確実に採用を成功させることが重要です。専門家のサポートがあれば、法的な要件を満たし、スムーズな手続きが実現できます。
企業の未来を拓く、ベトナム人採用への第一歩
本記事を読んで、「ベトナム人採用の全体像が掴めた」「一人で抱え込まずに、まずはプロに相談してみよう」と感じていただけたなら幸いです。
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人手不足の解消、そして企業の国際化に向けて、今すぐ第一歩を踏み出してみませんか?
執筆者:STAYWORKER事業部 / 益田 悠平
監修者情報:外国人採用コンサルタント / 堀込 仁志
株式会社USEN WORKINGの外国人採用コンサルタント。人材紹介・派遣の法人営業として多くの企業の採用課題に、そして飲食店経営者として現場のリアルに、長年向き合ってきた経験を持つ。採用のプロと経営者、双方の視点から生まれる具体的かつ実践的な提案を信条とし、2022年の入社以来、介護・外食分野を中心に数多くの企業の外国人採用を成功に導く。