
特定技能外国人を雇用する企業の皆様、資格外活動許可申請書の作成は、単なる手続きではありません。入管庁の厳しい審査基準や、意図しない法令違反による「不法就労助長罪」のリスクは、企業の存続を揺るがしかねない重大な課題です。これは、貴社の未来を守るための重要なプロセスと捉えるべきです。
「申請書で何を書けば許可が下りるのか?」「現場での業務指示が専従義務違反にならないか?」といった不安を抱えていませんか?本記事では、特定技能制度に特化した資格外活動許可申請書作成の具体的なノウハウと、企業が取るべきコンプライアンス強化策を徹底解説します。
目次
資格外活動許可の基本と特定技能で問題となる3つの論点
「資格外活動許可」とは、日本に在留する外国人が、現在持っている在留資格(ビザ)で認められている活動以外の、報酬を伴う活動を行う際に必要となる許可です。たとえば、留学生が学業の傍らアルバイトをする場合などがこれに該当します。
しかし、特定技能の在留資格を持つ外国人の場合、原則として許可された活動(雇用契約に基づく特定技能業務)に「専従」する義務があります。これは「専門的な業務に集中して従事すること」を意味し、他の在留資格とは異なる特有のリスクが存在します。
資格外活動許可申請の基本的な手続きは、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署で行われます。受付時間は平日午前9時から午後4時までが一般的ですが、事前の確認が不可欠です。申請人本人、または地方出入国在留管理局長に届け出た弁護士や行政書士が依頼を受けて行うことができます。
近年オンライン化も進んでいますが、資格外活動許可申請を単独でオンラインで行うことは原則としてできません。在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請など、他の申請と同時に行う場合に限られるという制約があります。このため、多くのケースで窓口での手続きが必要となることを理解しておく必要があります。
資格外活動許可申請の具体的な必要書類やオンライン申請の詳細は、「資格外活動許可申請の完全ガイド:必要書類とオンライン手続き」をご覧ください。
■特定技能で特に注意すべき3つの資格外活動リスク
特定技能外国人を雇用する企業が特に注意すべきは、以下の3つのリスクです。これらは、単なる申請手続きの不備にとどまらず、企業のコンプライアンスに深く関わってきます。
- 勤務時間外のアルバイト(通常違反)
最も一般的な資格外活動違反は、許可を得ずに報酬を伴う活動を行うケースです。例えば、特定技能外国人が、生活費の足しにするために許可なく週末に飲食店で調理や接客のアルバイトを行うことは、典型的な「通常違反」に該当します。
企業側は、外国人材が経済的な理由や待遇への不満から、意図せず許可外就労に走らないよう、適切な賃金設定や労務環境の整備、そして生活支援や相談窓口の設置といった労務管理を行う責任があります。
- 許可された業務範囲からの逸脱(専従違反)
特定技能外国人の雇用において、最も見過ごされがちなのが「専従義務違反」のリスクです。これは、特定技能外国人が、契約に基づかない単純作業や、許可された業務範囲外の活動に長期間従事させられるケースを指します。
例えば、介護分野で特定技能として雇用されたにもかかわらず、現場の都合で介護計画にない清掃業務や配膳業務のみに長期間従事させられる場合、これは実態として専従義務に違反していると判断され得ます。また、技術・人文知識・国際業務の在留資格で翻訳者として許可を得た者が、実際は工場でライン作業や清掃業務のみに従事した場合も違反とされます。企業が「人手不足の解消」といった理由で、外国人材を契約外の単純作業に充ててしまうと、重大なコンプライアンスリスクに繋がり、在留資格の取り消しや更新時の不利な判断を受ける可能性があります。
- 許可外活動の単純労働と判断されるリスク
仮に企業が資格外活動許可を申請したとしても、その活動内容が出入国在留管理庁によって「専門性を欠く単純労働」と判断された場合、許可が下りない可能性があります。
過去には、電子製品修理業務や研修名目での配膳・清掃業務が専門性不足と判断され、不許可となった事例も報告されています。企業は申請書を作成する際、当該活動が単なる単純労働ではなく、いかに本業を補完する専門性を持つか、または付随的であっても重要性を持つかを論理的に説明する必要があります。
特定技能外国人の3つの資格外活動リスクと企業への影響をまとめたのが以下の表です。
不許可を回避する「資格外活動許可 申請書」作成の記述テクニック
資格外活動許可 申請書の中でも、特に重要なのが「活動内容」欄の記述です。この欄の書き方一つで、許可の可否が大きく左右されます。特定技能外国人の「専従義務」を損なわない活動であることを、論理的な根拠をもって明確に示す必要があります。
■【重要】「活動内容」欄で不許可にならないための書き方
不許可リスクを最小限に抑えるためには、以下の2つのポイントを意識して「活動内容」欄を具体的に記述することが求められます。
- 業務の限定性
申請する活動が、特定技能の本業に支障をきたさないことを明確に記述しましょう。例えば、「勤務時間外」「短時間」「一時的な活動」であること、そして本業の業務時間や内容との関連性、補完性を具体的に説明することが重要です。これにより、本業への影響がないことを示します。
- 専門性または付随性の強調
当該活動が「誰でもできる単純労働」ではないことを論理的に説明する必要があります。過去の不許可事例では、「研修」名目での配膳・清掃業務が専門性不足と判断されたケースも存在します。
例えば、特定技能外国人が勤務時間外に飲食店での資格外活動を申請する場合、「単なる配膳や清掃」と記述するのではなく、「日本特有の高度な接客マナーの習得」「店舗運営に必要な在庫管理業務」「外国人観光客対応のための通訳業務」など、何らかの専門性や本業への学習効果がある点を強調することが有効です。名称だけでなく、実際の業務内容が専門性を要する具体的な記述を心がけましょう。
■専従義務遵守のための企業内ルールの明文化と運用
資格外活動許可申請書の内容が正確であるだけでなく、企業内の実運用が特定技能外国人の専従義務遵守に直結します。現場での安易な業務指示が、意図せず法令違反につながるリスクを排除するため、以下の対策を講じましょう。
- 業務指示の明確化
現場の管理職を含む全従業員が、特定技能外国人が従事する業務内容を正確に把握し、外国人材に指示する業務が特定技能の契約書および活動許可の範囲内であることを正確に理解している状態を担保することが重要です。定期的な業務内容の監査や確認体制を構築し、逸脱がないか常にチェックしましょう。
- 契約外作業の依頼プロセス
やむを得ず契約外または申請外の作業を外国人材に依頼せざるを得ない場合、必ず事前に人事・総務部門を通じて、その作業が資格外活動違反に当たらないかを確認する社内承認プロセスを構築することが不可欠です。これにより、現場の判断ミスを防ぎ、法令遵守を徹底できます。
企業が負う重大な責任と資格外活動違反の構造的リスク

資格外活動違反は、外国人材個人の問題にとどまらず、雇用する企業に深刻な法的・事業的影響を与える可能性があります。担当者の方は、このリスク構造を深く理解しておく必要があります。
■不法就労助長罪とは?企業が問われる責任
外国人が資格外活動違反を行った場合、本人には強制退去などの罰則が科される可能性があります。しかし、企業側も監督責任を問われ、「不法就労助長罪」のリスクを負うことになります。
不法就労助長罪とは、不法就労活動をさせる行為を助ける罪であり、「知らなかった」では済まされません。企業には、外国人材の就労実態を正確に把握し、法令を遵守させる義務があります。この罪に問われた場合、懲役や罰金といった刑事罰が科されるだけでなく、企業イメージの失墜、社会的な信用の喪失、さらには今後の外国人材雇用の困難化といった事業的な影響も避けられません。
■資格外活動違反に繋がる企業内の「構造的リスク」
資格外活動違反は、単に外国人材個人の問題として片付けられるものではありません。企業内の構造的な問題と密接に関連している場合が多々あります。
例えば、外国人労働者が低賃金や過酷な労働環境に置かれたり、コミュニケーションの問題やハラスメントに直面したりすると、生活が不安定化し、生活苦を理由に許可外就労(資格外活動違反)を始める動機となりやすい傾向があります。
つまり、企業内での労務管理の不備や、人権尊重を欠いた待遇は、単なる人事問題ではなく、資格外活動違反という法的なコンプライアンス問題にエスカレートする「構造的なリスク」として認識すべきです。この一連の連鎖を断ち切るためには、企業は申請書の正確性を担保するだけでなく、外国人材が安心して本業に専念できる環境を整備することが不可欠です。
企業が知っておくべき資格外活動違反リスクマッピングは以下の通りです。

結論:リスク管理のための最終チェックリストと次のアクション

本記事では、特定技能外国人の資格外活動許可申請書に関する情報に加え、不許可・違反事例に基づくリスク回避策、そしてコンプライアンス強化のための義務的支援の活用方法を解説しました。
■特定技能企業向け資格外活動リスク管理チェックリスト
企業が資格外活動リスクを確実に管理するための必須項目は以下の通りです。
- 申請前の確認事項: 申請活動の内容が「専門性を欠く単純労働」と判断されないよう、記述の具体性と論理的根拠を再確認しましょう。オンライン申請の利用条件(在留資格申請との同時申請)を正確に把握することも重要です。
- 専従違反防止策: 外国人材が特定技能の契約業務以外に従事していないか、現場の業務指示を定期的に監査する体制を整えましょう。契約業務からの逸脱(専従違反)は重大な違反となることを常に意識してください。
- 構造的リスクの予防: 義務的支援(相談窓口、住居支援など)を徹底し、外国人材の職場・生活の不満や経済的な困難(通常違反の動機)を早期に解消できる体制を維持することが、根本的なリスク予防に繋がります。
■今すぐ行動を:不安を解消し、確実なコンプライアンス体制を築くために
この記事を読み終えた企業・法人担当者の皆様は、資格外活動許可申請の複雑さや、自社の労務管理体制が法的リスクに直結していることをご理解いただけたことと思います。そして、具体的な解決策を求めているのではないでしょうか。
特定技能外国人雇用に関するあらゆる課題に対応するため、ぜひ一度専門家に相談してみることをおすすめいたします。
執筆者:STAYWORKER事業部 / 益田 悠平
監修者情報:外国人採用コンサルタント / 堀込 仁志
株式会社USEN WORKINGの外国人採用コンサルタント。人材紹介・派遣の法人営業として多くの企業の採用課題に、そして飲食店経営者として現場のリアルに、長年向き合ってきた経験を持つ。採用のプロと経営者、双方の視点から生まれる具体的かつ実践的な提案を信条とし、2022年の入社以来、介護・外食分野を中心に数多くの企業の外国人採用を成功に導く。