
慢性的な人手不足に直面し、特定技能外国人材の採用を検討されている企業様にとって、「採用後の定着」は最大の懸念ではないでしょうか。せっかく時間とコストをかけて採用しても、早期離職や失踪のリスクに頭を悩ませるケースは少なくありません。しかし、ベトナム人労働者が「日本で働く理由」を深く理解し、彼らの期待に応える環境を整備できれば、単なる労働力確保に留まらない「長期的な中核戦力」として企業を支える存在になり得ます。
本記事では、最新の特定技能制度動向や、政府が移行を議論する「育成就労制度」の展望も踏まえ、ベトナム人材が日本での就労を選ぶ真の動機を紐解きます。さらに、「定着率を高めるキャリアパス設計」「法令遵守とリスク管理」「助成金活用」といった実践的なノウハウを徹底解説します。企業の外国人採用を成功させ、事業成長へと繋げる具体的なヒントを、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ベトナム人が日本で働く理由を深く理解する
ベトナム人労働者が日本での就労を選択する背景には、単に「給料が良いから」という経済的な側面だけでなく、多様な動機が存在します。法務省の最新データによると、特定技能外国人材の約半数以上(53.1%)がベトナム人であり、彼らは日本の外国人雇用市場において最大勢力です。彼らの真の動機を理解することは、企業が外国人材を長期的な戦力として定着させる上で不可欠です。
■「経済的動機」だけではない!ベトナム人材の3つの本音
ベトナム人材が日本で働く主な理由は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
経済的動機: 家族の生活を豊かにしたい
ベトナムと日本では依然として大きな給与格差があります。日本で働くことで、母国の家族へ安定した収入を送金し、より良い生活環境を提供したいという強い思いが、最も強力な動機となっています。これは単なる個人の金銭欲ではなく、家族を大切にするベトナムの文化に根ざしたものです。
キャリア志向と技術習得: スキルアップと将来への投資
日本は技術力の高い先進国として広く認識されています。そのため、日本での就労は、単に稼ぐだけでなく、先進的な知識や技術を習得し、将来のキャリアアップに繋げたいという強い向上心を持つベトナム人にとって魅力的です。帰国後の現地企業での就職を見据え、日本での経験を貴重な財産と捉える人も少なくありません
文化的側面と生活環境: 親日感情と安心できる暮らし
ベトナムには強い親日感情があり、日本のアニメや文化に触れて育った世代も多くいます。また、日本の治安の良さ、整備されたインフラ、清潔な生活環境の質の高さも、長期滞在を検討する上で重要な動機となります。安心で快適な暮らしは、仕事への集中力を高め、定着にも良い影響を与えます。
これらの動機を複合的に理解することで、企業はベトナム人材の潜在的な能力を最大限に引き出すためのアプローチを考えることができます。
■企業に求める「期待」を理解する
ベトナム人材が日本で働く上で、企業に対して抱いている具体的な期待を理解することは、効果的な受け入れ体制を構築する上で非常に重要です。彼らは単に給与や福利厚生だけでなく、「長期的なキャリア形成へのサポート」や「安心して働ける職場環境」といった点を重視しています。
丁寧な指導やサポート体制: 日本での仕事や生活に慣れるまでの間、きめ細やかな指導やサポートを求めます。特に来日当初は言語や文化の違いによる不安が大きいため、安心して働ける環境が重要です。
明確なキャリアプランや昇進プラン: キャリア志向の強いベトナム人にとって、将来のキャリアパスが明確に示されていることは、高いモチベーションに直結します。どのようなスキルを身につければ昇進できるのか、具体的な道筋を提示することが求められます。
会社のビジョンや将来の展望への共感: 企業がどのような目標を持ち、社会に貢献しているのか、そのビジョンに共感できるかを重視する傾向があります。自身の仕事が会社の成長にどう繋がるのかを理解することで、より主体的に業務に取り組むことができます。
これらの期待を整理したのが以下のリストです。貴社の受け入れ体制整備のチェックリストとしてご活用ください。
長期定着と戦力化を実現する「採用戦略」
ベトナム人材の採用を成功させ、彼らを長期的な中核戦力として育成するためには、彼らの就労動機と期待に応える戦略的なアプローチが必要です。
■定着率を高めるキャリアパス設計
ベトナム人の強いキャリア志向に応えるには、入社当初から明確な育成ロードマップを示すことが非常に重要です。単に人手不足を補うだけでなく、彼らが将来的に企業の中核人材として活躍できるようなキャリアパスを設計しましょう。
特定技能2号は、永住権取得の道も開かれる重要なステップであり、外国人材の長期的な日本での生活を支援する上で不可欠です。個別のスキルアップ支援や目標設定のサポートを通じて、彼らが自身の成長を実感できる環境を提供することが、高い定着率と長期戦力化に繋がります。
■助成金活用で採用・定着コストを軽減
外国人材の採用や定着には、初期費用や教育費用がかかることがあります。しかし、国や自治体が提供する助成金を活用することで、これらの経済的負担を大幅に軽減することが可能です。
特に「人材確保等支援助成金」は、外国人労働者の職場定着にかかる経費が助成される制度として注目されています。この助成金を活用することで、外国人材が安心して長く働ける環境整備を経済的な心配なく進めることができます。
■コミュニケーションギャップを埋める現場マネジメント
文化的な摩擦や言語の壁は、外国人材の定着を阻害する大きな要因となり得ます。これらを乗り越えるためには、現場でのきめ細やかなマネジメントが不可欠です。外国人労働者の入職経路として、知人・友人からの紹介(リファラル)が43.0%と最大であるというデータ(法務省「外国人労働者の意識調査」より)からも、既存の外国人材が満足して働ける環境を整えることが、新たな人材確保にも繋がる好循環を生むことがわかります。
企業は、ベトナムの文化や習慣を理解し、お互いの価値観を尊重する姿勢を持つことが重要です。具体的なコミュニケーション手法としては、簡潔で分かりやすい言葉遣いを心がけたり、図や写真を用いるなどの工夫が有効です。また、多文化共生を促進する社内研修の実施や、先輩社員がメンターとして新入社員をサポートするメンター制度の導入も効果的です。定期的な面談とフィードバックを通じて信頼関係を構築し、小さな不安や疑問を早期に解消できる体制を整えましょう。
最新!法令遵守とリスク管理で安心の外国人採
外国人材の雇用は、日本の法律や制度に基づき適切に行う必要があります。特に特定技能制度は常に最新の情報を把握し、法令遵守を徹底することが、企業にとって最も重要なリスク管理となります。
■特定技能制度の最新動向と「育成就労制度」への移行
特定技能制度は、人手不足が深刻な特定の産業分野において、外国人材を受け入れるための在留資格です。2025年時点でも多くの外国人材が特定技能制度を活用して日本で活躍していますが、現在、政府は技能実習制度に代わる新たな「育成就労制度」への移行を議論しています。特に、特定技能分野においてベトナム人が最大勢力(53.1%)を占める一方で、介護分野ではベトナム人の伸びが鈍化・微減しているといった構造的な背景も存在します。これらの最新動向を理解し、適切な採用戦略を立てることが重要です。
育成就労制度は、外国人材の育成とキャリアアップをより重視する制度として設計されており、企業側も今後の変更点や対応準備について、最新の情報を把握しておく必要があります。
■離職・失踪リスクを未然に防ぐ人事管理
外国人材の採用において、早期離職や失踪は企業が最も懸念するリスクの一つです。これらのリスクを未然に防ぐためには、法令遵守はもちろんのこと、高度な人事管理手法を取り入れることが有効ですし、企業としての信頼性にも関わります。
まず、大前提として、適切な在留資格の確認や、日本人と同等以上の給与設定、そして労働条件を明確にした雇用契約書の作成といった基礎的な法令遵守を徹底することが重要です。特に「日本人と同一条件で募集」する際の具体的な給与設定や待遇の基準については、地域の最低賃金はもちろん、同職種の日本人従業員の給与水準や業務内容を総合的に判断し、不当な差別がないように慎重に設定する必要があります。これにより、外国人材の納得感を高め、定着に繋がります。
万が一、ベトナム人従業員が早期に離職したり、失踪したりした場合、会社が負う法的なリスクや行政への対応義務は決して小さくありません。高離職率の予防策として、離職率が高い特定の部門やマネージャーを特定し、退職理由を構造的に分析する、より高度な人事管理の手法も検討すべきです。これにより、職場環境の根本的な改善に繋がり、現場の管理レベル向上にも貢献します。
まとめ
ベトナム人材の長期定着には、経済面だけでなくキャリア志向や生活環境への期待を深く理解し、それに応える体制整備が不可欠です。明確なキャリアパスや助成金の活用、そして法令遵守に基づく適正な管理を徹底することで、彼らは単なる労働力ではなく、企業の成長を支える中核戦力となり得ます。相互理解と信頼関係の構築こそが、外国人採用を成功に導く鍵となるでしょう。
執筆者:STAYWORKER事業部 / 益田 悠平
監修者情報:外国人採用コンサルタント / 堀込 仁志
株式会社USEN WORKINGの外国人採用コンサルタント。人材紹介・派遣の法人営業として多くの企業の採用課題に、そして飲食店経営者として現場のリアルに、長年向き合ってきた経験を持つ。採用のプロと経営者、双方の視点から生まれる具体的かつ実践的な提案を信条とし、2022年の入社以来、介護・外食分野を中心に数多くの企業の外国人採用を成功に導く。