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在留カードが「ない人」とは?まず知っておくべき基礎知識
外国人労働者を受け入れる企業や、人材紹介会社にとって「在留カードがない人」への対応は非常に重要なテーマです。適切な確認を怠れば、雇用主側が知らずに不法就労を助長してしまうリスクもあります。このセクションでは、在留カードがない人がどのような状態を指すのか、そしてそれが法律上どのように扱われているのかを整理していきます。また、かつて使われていた外国人登録証明書との違いや、現場で実際に起こりうる不携帯や紛失、未交付といったケースについても、具体的な状況とともに解説していきます。
■在留カードがない人とは?意味と法律上の定義
在留カードがない人とは、日本に在留する外国人のうち、所持が義務付けられている在留カードを何らかの理由で保有していない状態の人を指します。たとえば、来日して間もないためにまだカードが交付されていない人や、カードを紛失してしまった人、あるいは携帯していないだけのケースも含まれます。これらはいずれも、状況によっては違法とみなされる可能性があるため、本人だけでなく雇用主にも注意が必要です。
日本の出入国管理及び難民認定法により、中長期在留者は在留カードを常に所持し、必要に応じて提示する義務があります。したがって、カードがないという状況が一時的なものであっても、警察や入管による確認の際に証明ができなければ、不法滞在とみなされることもあります。そのため、雇用前に必ず有効な在留カードを確認し、コピーを取得しておくことが実務上非常に重要です。
■外国人登録証明書との違いは?
かつて外国人が所持していた「外国人登録証明書」は、2012年7月9日に廃止され、現在の在留カード制度に移行しました。これにより、在留資格の管理はより厳格かつ一元化され、最新の在留情報が反映される仕組みとなりました。現在では外国人登録証明書は法的効力を持たず、正式な本人確認書類として使用することはできません。
しかし、長期にわたり日本に在住している外国人の中には、古い書類を保持している人もいます。このような場合、企業側がうっかり古い証明書を「有効な書類」と誤認してしまうリスクもあります。在留カードがない状態で外国人登録証明書のみを提示された場合、それをもって在留資格の確認とすることはできません。あくまで在留カードの提示が必要であり、制度上の大きな変更点を理解した上で対応する必要があります。
■不携帯・紛失・未交付のケーススタディ
在留カードがない理由は人によってさまざまですが、現場で多く見られるのが不携帯・紛失・未交付の3つのケースです。たとえば、不携帯のケースでは「近くのコンビニに行くだけだから」と在留カードを持ち歩かない人もいますが、これは法律違反にあたります。万が一、職務質問などで提示を求められた場合、事情を問わず違反行為とされる可能性があるため、常に携帯する必要があります。
紛失した場合は、速やかに最寄りの警察署で遺失届を提出し、出入国在留管理局で再交付の手続きを行わなければなりません。再交付申請中であっても、申請書の控えなどで一時的に事情を説明できる書類を持っておくことが推奨されます。また、来日直後で未交付の場合も、在留カード交付の対象か否かを確認し、交付までの手続き状況を明確に把握しておくことが必要です。
これらのケースにおいて重要なのは、雇用主が「在留カードがない=不法就労」とすぐに判断するのではなく、背景や状況を冷静に確認することです。場合によっては合法的な理由があることも多いため、正しい知識と確認体制が求められます。
在留カードがない場合に起こるトラブルとリスク
日本で働く外国人にとって、在留カードの提示は法律で定められた義務です。しかし現実には、さまざまな理由で在留カードを所持していない人も存在します。このような「在留カードがない人」が関係するトラブルは、本人だけでなく雇用主にも深刻な影響を及ぼします。本見出しでは、不法滞在とみなされるリスク、企業側が受ける罰則、そして外国人本人が直面する可能性のある処罰について詳しく解説していきます。
■不法滞在とみなされるリスクとは
在留カードが手元にない状態で日本に滞在していると、たとえ合法的な在留資格を持っていたとしても、その場で証明できなければ不法滞在と判断される可能性があります。これは、入管法で定められた「携帯義務」に違反しているためです。
警察官や入国管理官に職務質問を受けた際、即座に在留資格を証明できないと、身柄を一時的に拘束されたり、事情聴取を受けることになります。その間に正式な書類を提出できれば誤解は解けますが、対応が遅れれば、滞在資格の不備や在留状況の不正を疑われ、結果として退去強制の対象になるケースもあり得ます。とくに、再交付の手続き中であっても、証明となる控えを持っていなければ、現場の判断で「不法滞在」と扱われてしまうことがあるため注意が必要です。
■雇用主が受ける罰則と行政指導
外国人を雇用する際、企業は必ず在留カードの確認を行わなければなりません。確認を怠った場合、知らぬ間に就労資格のない外国人を働かせてしまうことにつながり、結果として「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。この罪に該当すると、法人代表者や経営者には罰金や懲役といった刑事罰が科されることがあり、企業としても行政処分や社会的信用の低下という大きなダメージを受けることになります。
また、労働基準監督署や入国在留管理庁からの立ち入り調査や指導が入ることもあり、再発防止のための体制見直しや雇用停止命令が出される場合もあります。特に中小企業にとっては、一度のミスが経営に大きな影響を及ぼすため、雇用前の書類確認は徹底する必要があります。
■外国人本人にかかる処罰と強制退去の可能性
在留カードを所持していない外国人本人も、法律違反に該当する場合には処罰の対象となります。単なる不携帯であれば過料で済むケースもありますが、カードを失くしたまま長期間放置していたり、就労資格が失効していることを隠して働いていた場合は、より重い処分に発展します。
特に悪質と判断されれば、退去強制命令が出され、日本からの強制的な出国を命じられることになります。この処分を受けると、一定期間日本への再入国が禁止される措置が取られ、本人の生活や将来の計画にも大きな支障が生じます。本人が自覚なく違反状態にあることも多いため、正しい情報と意識を持つことが必要です。再交付の申請や資格変更などの手続きを怠らず、常に在留状況を最新の状態に保つ努力が不可欠です。
在留カードがない外国人を雇用する前に必要な確認
在留カードの提示がないまま外国人を雇用することは、企業にとって極めてリスクの高い行為です。しかし現実には、来日直後や紛失などの理由により、在留カードが手元にない外国人が存在することもあります。こうした場合でも、法令に基づいた対応を徹底すれば、雇用が可能なケースもあります。
この見出しでは、在留カードがない状況であっても合法的に雇用できるかどうかを判断するためのポイントについて説明します。確認すべき代替書類、雇用契約書作成前の注意点、そしてハローワークとの連携について解説します。
■在留資格認定証明書など代替書類の有無を確認
在留カードがまだ交付されていない外国人であっても、「在留資格認定証明書」や「交付申請中の受領証」などの代替書類を提示できる場合があります。これらはあくまで一時的な確認手段ではありますが、就労可能性を判断する材料としては有効です。
たとえば、技能実習生や特定技能者が来日直後の場合、カードが発行されるまでに一定の時間を要することがあります。このような状況では、申請書の写しや入管からの通知書類など、現在の手続き状況を裏付ける書類を確認し、コピーを取得しておくことが重要です。ただし、これらの書類だけでは就労資格を正式に証明するものとはならないため、在留カードの交付が完了した時点で、改めて確認と記録を行うことが必須となります。
■雇用契約書作成前に行うべきチェックリスト
外国人を雇用する前には、契約書の内容以前に、法的にその人を働かせて問題ないかを確認する必要があります。最初にすべきことは、本人確認書類の提示とその内容の確認です。在留カードが手元にない場合は、その理由を明確に聞き取り、必要に応じて代替書類を確認します。その上で、雇用しようとしている業務内容が、本人の持つ在留資格で認められているかを照合する必要があります。仮に在留資格が「留学」や「家族滞在」であれば、資格外活動許可がなければ原則として就労はできません。
こうした前提条件を正しく把握せずに契約を進めると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。契約書を取り交わす前に、在留カードの取得予定時期や申請状況も確認し、必要があればその記録も保管しておくことが、リスク回避に大きく役立ちます。
■ハローワークでの確認と報告義務のポイント
外国人を雇用する際には、在留カードだけでなく、雇用状況の報告義務にも注意が必要です。日本の法律では、企業が外国人を新たに雇用した場合や離職させた場合、ハローワークへの届け出が義務付けられています。とくに、在留カードが交付されていない段階で雇用を開始する場合には、その理由や背景を正確に記録し、後からの報告でトラブルにならないようにする必要があります。ハローワークでは、雇用管理に関する情報提供やアドバイスを受けることもできるため、不安がある場合は事前に相談しておくのが安心です。
また、届け出を怠ると、企業としての信頼性が損なわれ、行政指導の対象になることもあるため、制度の理解と確実な対応が不可欠です。ハローワークとの連携は、外国人雇用を継続的かつ安定的に進めるうえでの重要な柱となります。
理由別!在留カードがない人への対応とサポート法
外国人の在留カードがない状況には、理由ごとに異なる背景と対処方法があります。単なる紛失や盗難による一時的なものから、制度上の手続きが完了していないためにカードが未交付となっているケースまでさまざまです。また、技能実習や特定技能、留学といった在留資格ごとにも異なる配慮が必要です。この見出しでは、代表的な理由別に、企業や受け入れ機関が取るべき具体的な対応と、適切なサポート方法について解説します。
■紛失・盗難時の再交付手続き方法
在留カードを紛失、あるいは盗難に遭った場合、外国人本人は速やかに必要な再交付手続きを行う義務があります。まず、最寄りの警察署で遺失届または盗難届を提出し、その証明を取得します。次に、出入国在留管理局にて再交付申請を行いますが、その際には証明写真やパスポート、警察署発行の届出受理証明書などが必要になります。
申請から交付までは通常2週間から1か月程度かかるため、その間に雇用先が本人に対してどのように対応するかが重要になります。再交付が完了するまでの間も、申請受理証明や受付票のコピーを保管し、就労の合法性を証明するための書類として活用することが推奨されます。雇用主側としても、本人の申請状況を随時確認し、更新完了のタイミングで再確認を行うことでリスクを最小限に抑えることが可能です。
■在留カード未交付の外国人技能実習生の対応
外国人技能実習生の場合、来日から在留カードの交付までに数日から数週間かかることがあります。特に入国直後は、本人がカードの所在を把握していないケースもあり、受け入れ企業や監理団体が状況を丁寧に把握する必要があります。まずは、出入国在留管理局での手続き状況を確認し、交付予定日や書類の受領方法を明らかにします。在留カードの未交付期間中は、入国スタンプのあるパスポートや上陸許可証などをもとに、在留資格の有効性を判断します。
ただし、これらの書類では就労資格の確認としては不十分な場合もあるため、カードの交付が完了するまでは実質的な就労開始を見送ることが推奨されます。監理団体を通じての迅速な情報共有と、本人への丁寧な説明が、トラブルを回避する鍵となります。
■特定技能・留学生の場合の注意点と支援策
特定技能や留学といった在留資格を持つ外国人にも、在留カードがない状況が起こりうることがあります。特定技能の人材は、在留資格認定証明書をもとに入国してからカード交付までに時間がかかることがあるため、受け入れ企業は申請スケジュールをあらかじめ確認し、必要書類を整えておくことが大切です。
一方で、留学生については資格外活動許可の有無によって就労の可否が分かれるため、在留カードと併せて許可の記載内容を正確に確認する必要があります。どちらの場合も、カード未所持の理由を明確に把握し、代替となる証明書類の有無、今後の取得予定などを記録しておくことがリスク管理に直結します。また、学校や登録支援機関と連携を取り、本人が適切に手続きを進められるようサポートすることが、円滑な受け入れ体制の構築に不可欠です。
在留カードがない人に関するよくある質問
在留カードを所持していない外国人との関わりにおいて、企業や雇用主、本人自身からさまざまな疑問が寄せられることがあります。特に、空港での対応や「在留カード不要」といった曖昧な案内、さらには雇用中にカードを紛失してしまった場合の対処については、現場で混乱が生じやすい項目です。ここでは、実務上よく問われるシーンを取り上げ、法律と現実のバランスを踏まえた対応方法を紹介します。
■空港で在留カードがないとどうなる?
在留カードは、基本的に日本に中長期滞在する外国人に対して入国時に交付されるものですが、空港で受け取るタイミングや手続きが完了していない場合、カードが即時に交付されないことがあります。たとえば、地方空港ではカードが即時発行されず、後日郵送される手続きが取られることもあり、到着後すぐにカードを持っていない状態が発生します。
このような状況は制度上認められており、空港で発行予定の通知が渡されるため、その書面を一時的な証明書類として使用することが可能です。つまり、カードそのものがなくても、それを裏付ける正式な書類がある限り、入国や在留資格に違法性があるわけではありません。ただし、その後の受け取りや管理を怠った場合は、正当な在留を証明できず不法とみなされるおそれがあるため、注意が必要です。
■「在留カード不要」と言われたケースの真偽
実務の現場では、本人や支援者から「自分は在留カードを持たなくても大丈夫だと言われた」という説明を受けることがあります。しかし、これは非常に危険な誤解です。短期滞在や外交、公用といった一部の特例を除いて、中長期在留者は在留カードの所持が義務付けられています。したがって、在留カードが不要とされるケースは極めて限定的であり、ほとんどの就労者や留学生には該当しません。
こうした誤情報に基づいて雇用を進めてしまうと、企業が不法就労を助長してしまうことにもつながります。そのため、雇用前には必ず制度上の義務を確認し、「在留カード不要」という主張に対しては必ず入管への確認を行うことが安全です。制度の誤解を避けるためにも、正式な情報源を基に判断を下すことが肝要です。
■雇用継続中にカードを紛失した場合の対処法
すでに雇用関係が成立している外国人が在留カードを紛失した場合、雇用主としてまず行うべきは、本人に対して速やかに再交付手続きを取るよう促すことです。遺失届の提出や入管での申請など、必要な手続きを正しく行っているかを確認し、その証明書類を企業としても保管しておくことで、万一の監査時にも状況を説明できます。再交付の期間中は、在留資格そのものが無効になるわけではありませんが、提示義務を果たせない状況であるため、業務中の本人確認などに影響が出る可能性があります。
また、再交付完了後には新しい在留カードのコピーを速やかに取得し、雇用記録を更新することが重要です。こうした一連の対応を適切に行うことで、雇用の継続に支障をきたすことなく、法令順守の姿勢を社内外に示すことができます。