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在留カードにおける「就労不可」とは何か
特定技能制度は、日本国内で人手不足が深刻な業界において、即戦力となる外国人労働者を受け入れるために設けられた在留資格です。2019年に施行されて以来、多外国人を雇用する際に、企業や担当者が必ず確認すべきポイントのひとつが「在留カードにおける就労可否」です。特に「就労不可」と記載されている在留カードは、企業側の対応を一歩間違えれば不法就労助長に繋がるリスクがあります。この「就労不可」という表記は、単に働けないという意味にとどまらず、どのような活動が可能で、どのような制限があるのかを具体的に把握しないと、雇用主も本人も思わぬトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
本記事では、在留カードに記載された「就労不可」の真意を読み解きつつ、その見分け方や、実際に働けるかどうかの判断基準を詳しく解説します。見落としがちなカード裏面の記載や、資格外活動許可との関係など、現場で役立つ知識を体系的に整理することで、外国人労働者の適切な受け入れに繋がる内容をお届けします。
■在留カードに書かれた「就労不可」の意味とは
在留カードに「就労不可」と明記されている場合、その外国人は原則として日本国内で報酬を得る活動、つまり就労を行うことができません。これは留学生や家族滞在ビザのような、就労を主目的としない在留資格で多く見られます。ただし、「就労不可」と書かれているからといって、絶対に働けないわけではありません。資格外活動許可を取得しているかどうかによって、例外的にアルバイト等の就労が認められる場合もあるのです。
この「就労不可」は在留カード表面の「就労制限の有無」欄に表示されており、企業が採用判断を行う上で非常に重要な情報です。しかし、単純に「就労不可」という表記だけで判断すると、誤った採用や不法就労に繋がる恐れがあります。適切な確認と理解がなければ、外国人本人だけでなく雇用する側も罰則の対象になりかねません。そのため、この表記が何を意味し、どのように読み取るべきかを正確に理解することが必要不可欠です。
■就労不可の在留カードでもできること・できないこと
就労不可の在留カードを持っている場合でも、すべての労働が禁じられているわけではありません。たとえば、留学生や家族滞在のビザを持つ外国人が「資格外活動許可」を取得していれば、1週間あたり28時間以内のアルバイトが可能になります。ただし、この許可がなければ、たとえコンビニでの短時間勤務であっても不法就労と見なされるため注意が必要です。
一方で、「就労不可」とされる在留資格には、原則として収入を伴う仕事をする目的での滞在が認められていないという前提があります。つまり、フルタイムでの就職や派遣労働は原則不可です。また、在宅ワークや副業のような業務でも、収入が発生する活動であれば同様に制限の対象となります。就労の定義には「報酬を得る一切の活動」が含まれるため、非対面の仕事でも許可が必要です。
このように、就労不可であっても資格外活動の許可を得ることで可能になる業務はあるものの、許可の範囲や制限時間などを超えた場合は、本人だけでなく雇用側にも大きなリスクが生じます。在留カードにおける「できること」と「できないこと」を正しく切り分けることが、リスク回避と適正な雇用の鍵となります。
■在留カードの「就労制限有無」欄の見方をマスターしよう
在留カードを確認する際、多くの担当者が見落としがちなのが「就労制限の有無」欄の具体的な記載内容です。この欄には「就労不可」「指定された機関での就労に限る」「制限なし」など、就労に関する情報が簡潔に記されていますが、それぞれの文言が持つ意味は大きく異なります。特に「就労不可」と書かれている場合、そのまま就労ができないと判断しがちですが、資格外活動許可がある場合は例外も存在します。
重要なのは、カードの表面だけでなく裏面にも注目することです。裏面には「資格外活動許可」や「在留資格変更」など、最新の変更履歴や追加許可が反映されていることがあります。この情報を見逃してしまうと、雇用の可否を正確に判断することができません。特に企業が外国人をアルバイトや派遣として採用する際には、カードの裏表を丁寧に確認し、最新の記載内容を把握する必要があります。
さらに、就労可能かどうかは在留資格そのものと、それに付随する条件の組み合わせによって決まります。「制限なし」であっても在留期間が短ければ更新が必要であり、「指定書による」表記がある場合は就労先が限定されることもあります。したがって、「就労制限の有無」欄だけでなく、在留資格名やカード全体の情報を読み解く力が求められます。
就労不可でも働ける?資格外活動許可の現実
在留カードに「就労不可」と記載されている場合でも、すべての就労が完全に禁止されているわけではありません。日本に滞在する外国人の中には、留学生や家族滞在など、もともと就労を目的としていない在留資格で滞在している人が多くいます。こうした人々でも、条件を満たし、適切な手続きを踏めば「資格外活動許可」を取得することで、制限付きではあるものの就労が認められる場合があります。
この許可制度は、生活費の補填や実務経験の取得を目的としたアルバイトなどを想定しており、一定の時間や業種に制限が設けられています。しかし制度を十分に理解しないまま働き始めたり、雇用側が確認を怠ったりすると、たとえ短時間の労働であっても不法就労と見なされ、在留資格の取り消しや企業への罰則につながる可能性があります。
この記事では、資格外活動許可の内容と対象、申請方法、そして審査における注意点まで、就労不可とされる在留カードを持つ外国人が合法的に働くための具体的な条件を解説していきます。
■資格外活動でアルバイトが可能なケース
「就労不可」と書かれた在留カードを持っていても、資格外活動許可を受けていれば、一定条件のもとでアルバイトなどの就労が可能です。特に多いのが留学生や家族滞在の在留資格を持つ外国人が、コンビニや飲食店、ホテルなどで働くケースです。この資格外活動は、在留資格の本来の活動を妨げない範囲で、限定的に就労を認める制度です。
この制度を利用するには、まず事前に出入国在留管理庁に申請し、許可を得る必要があります。許可を受けた後は、原則として週28時間以内の労働が認められ、長期休暇中は1日8時間、週40時間まで働くことが可能です。ここで注意すべきは、「28時間以内」はすべての雇用先を合計した時間であるという点です。複数のバイト先を掛け持ちしても、合算が28時間を超えてしまうと違反となります。
また、風俗関連業やパチンコ店などの一部業種では、資格外活動での就労が明確に禁止されており、これに違反すると許可の取り消しや強制退去の対象になることもあります。企業としても、雇用前に資格外活動許可の有無とその内容をしっかり確認し、就労条件に違反しない範囲での雇用を徹底することが求められます。
■留学生や家族滞在ビザが働ける条件とは
留学生や家族滞在ビザを持つ外国人が日本で働くには、在留資格の範囲外となるため、必ず資格外活動許可を取得しなければなりません。とくに留学生の場合、就労の目的で来日しているわけではなく、本来の在留資格の活動は「学業」です。そのため、アルバイトが認められるのは学業の妨げにならない範囲に限定されています。許可が得られていれば、一般的な飲食店やコンビニ、ホテルの清掃業務などでの就労が可能になります。
一方で、家族滞在ビザの保持者も同様に、配偶者の扶養を目的とした滞在であるため、原則として就労はできません。ただし、同様に資格外活動許可を得ることで、時間制限内のアルバイトが可能です。これにより、生活費を補うためにパート勤務をする配偶者なども増えています。
重要なのは、こうした労働はあくまで副次的な活動と位置づけられている点です。たとえば、学業を放棄してフルタイムで働いたり、許可のない業種で働いたりすれば、それは不法就労に該当し、在留資格の取消や退去強制につながります。企業側も、雇用時には必ず在留カードと資格外活動許可の有無を確認し、合法的な範囲内での雇用に努める必要があります。
■資格外活動許可の申請手順と審査のポイント
資格外活動許可の取得には、決して難しい手続きは必要ありませんが、正確な書類準備と条件への理解が不可欠です。まず、申請者は最寄りの出入国在留管理庁に申請書を提出し、申請時には在留カード、パスポート、在学証明書(留学生の場合)などが必要です。審査には通常2週間から1か月程度かかります。
この申請で重要なのは、あくまでも「本来の活動に支障が出ない範囲内」であることを証明する点です。たとえば留学生であれば、学校への出席状況や成績証明などが、審査の材料として活用されることがあります。学業に不真面目であると判断されれば、たとえ短時間の就労であっても許可が下りない場合もあります。
また、許可を得た後も注意が必要です。許可証には有効期限があり、在留期間の満了と同時に失効します。そのため、延長を希望する場合は、在留期間更新と同時に再申請が必要です。企業側としても、在職中の外国人スタッフの資格外活動許可が有効かどうかを定期的に確認する体制を整えるべきです。
申請内容に不備があると審査に時間がかかるほか、不許可になる可能性もあるため、事前に行政書士などの専門家に相談することも有効な手段となります。
就労不可の外国人を雇用するとどうなる?
外国人雇用が一般化する中で、企業が見落としてはならないのが「在留カードの確認義務」です。特に在留カードに「就労不可」と記載されている外国人を誤って雇用してしまった場合、その責任は非常に重く、企業側に多大なリスクが伴います。「本人が働けると言ったから」「学生だから少しだけ」などといった曖昧な理由は通用しません。
実際には、就労不可の記載がある在留カードを持つ外国人であっても、資格外活動許可を取得すれば一定条件下での就労は可能です。しかし、それはあくまで事前の申請と許可があってこそ成立するものです。許可のない外国人を雇用した場合、たとえ労働時間が短くても、企業は不法就労助長罪として刑事責任を問われる可能性があります。
この記事では、就労不可の在留カードに記された情報の重要性、見落としがちな落とし穴、そして企業として求められる確認体制について、現場レベルで注意すべきポイントを整理して解説します。
■不法就労者を雇用した企業の法的リスク
外国人の在留カードに「就労不可」と記載されているにもかかわらず、その外国人を雇用した場合、企業は重大な法的責任を負うことになります。入管法においては、資格外活動許可がないにもかかわらず就労させることは「不法就労助長罪」に該当し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。
このリスクは、意図的な違反だけに限られません。「就労可能だと思っていた」「在留カードを十分に確認していなかった」という場合でも、結果的に不法就労に加担したと判断されれば、企業としての責任を逃れることはできません。さらに悪質と判断されれば、企業名が公表されたり、行政処分や業務停止の対象となったりするケースもあります。
このような事態は、企業の信用に大きなダメージを与えるだけでなく、すでに在籍している外国人スタッフの在留資格にも悪影響を及ぼす可能性があります。正確な在留カードの確認と、資格外活動許可の有無のチェックは、企業が責任を持って行うべき最低限の労務管理であり、決して形式的なものではありません。
■就労不可の在留カードを見逃す企業の落とし穴
外国人を雇用する企業にとって、在留カードの確認はもはや必須のプロセスですが、形式的に「カードを見た」だけで終わってしまっているケースも少なくありません。特に注意すべきなのが、「就労制限の有無」の欄です。この部分を正確に読み取れない、あるいは裏面の資格外活動許可の有無まで確認しないまま雇用を進めてしまうと、気付かぬうちに不法就労に加担することになりかねません。
また、外国人本人が「働けると思っていた」と説明した場合でも、それを鵜呑みにして確認を怠るのは企業側の責任です。在留カードの記載は非常にシンプルな表現で記載されていますが、その背後には法的な意味合いがあり、ひとつの文言の解釈ミスが大きなトラブルに発展します。特に新入社員やアルバイト採用の現場では、担当者の法的知識が不足していることもあり、見落としが発生しやすくなっています。
こうしたミスを防ぐには、在留カード確認時のマニュアル整備や、担当者への定期的な研修、専門家によるチェック体制の導入が不可欠です。単なる形式的な確認にとどまらず、制度そのものへの理解を深めることが、企業を守る重要な施策となります。
■「知らなかった」では済まない労務管理の注意点
外国人雇用に関して最も多い企業側の言い訳が「知らなかった」というものです。しかし入管法上、無知は免責の理由にはなりません。雇用主には、在留カードの記載内容を正しく読み取り、就労可能かどうかを確認する法的義務があります。特に「在留カード 就労不可」と記載されている外国人に対しては、そのまま雇用することが重大な違法行為となる可能性が高いため、慎重な確認が求められます。
「在留カードをコピーしておけば大丈夫」「本人が説明してくれたから確認不要」といった甘い対応は、後に大きなリスクを招く原因になります。さらに、監督官庁や警察による調査が入った際、記録が不十分であると、企業側の管理責任が問われ、行政指導や処罰の対象となることもあります。
企業が安全に外国人を雇用するためには、採用時の確認手順を明文化し、全担当者に対して統一した対応を徹底する必要があります。また、在留資格や就労制限の内容が変更された場合にも迅速に対応できるよう、定期的なチェック体制を整えることが求められます。「知らなかった」では済まされない時代において、労務管理の正確さと法令順守が、企業の信頼と成長を守る鍵となるのです。
在留カードの就労制限を変更したいときの手続き
在留カードに「就労不可」と記載されていても、日本での生活やキャリアの変化により、正社員として働きたい、あるいはフルタイムでの雇用を希望するケースは少なくありません。そのような場合に検討されるのが「在留資格の変更」です。とくに就労制限がかかっている在留資格から、就労が認められる「就労ビザ」へと切り替えることで、合法的にフルタイムで働くことが可能になります。
しかし、在留資格の変更は単なる申請書提出では済まず、申請人の経歴や勤務予定先、職務内容、さらには企業の体制に至るまで多角的に審査されます。申請が不十分であったり、制度の趣旨と合わない内容であれば不許可となる可能性もあるため、慎重な準備が不可欠です。就労不可の状態から働ける資格へと変更するためには、制度への理解と的確な書類作成、そして申請後の対応まで含めた一貫した戦略が求められます。
■在留資格変更許可の申請方法と必要書類
在留カードに「就労不可」と明記されている場合でも、将来的に日本で働くことを希望する場合は、在留資格の変更申請を通じて「就労可能な資格」へ切り替えることが可能です。この申請は、本人が直接出入国在留管理庁に行うもので、状況によっては代理人による申請も認められます。
申請時には以下のような書類が求められます:在留資格変更許可申請書、在留カードのコピー、パスポート、写真、そして就労先企業が発行する雇用契約書や会社案内、登記事項証明書など。特に企業側が発行する書類は、雇用の実態と職務内容、就労資格との整合性を示す上で非常に重要なポイントとなります。
また、申請には理由書の提出も求められることが多く、なぜ現在の在留資格では目的を達成できないのか、なぜ就労資格への変更が必要なのかを論理的に説明する必要があります。書類が不完全だったり、不自然な内容であれば審査に時間がかかるだけでなく、不許可となるケースもあります。
そのため、変更申請を行う際には、事前に必要な書類を正確に把握し、抜け漏れのない状態で提出することが成功への第一歩となります。
■就労ビザへの変更で認められやすい条件とは
在留資格を「就労不可」から「就労可能」に変更するためには、法的に認められる条件を満たしていることが前提となります。とくに「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」「技能」などの就労ビザに切り替えるには、単に働きたいという意思だけでなく、その職務内容が在留資格の要件に合致している必要があります。
具体的には、専門性のある職種や学歴との関連性が重視されます。たとえば、文系の大学を卒業した人が、通訳やマーケティング職として採用される場合、学歴と職種の整合性が取れているため、比較的認められやすい傾向にあります。また、雇用先企業が安定しており、継続的に就労環境を提供できる体制が整っているかどうかも重要な審査ポイントです。
一方、単純労働と見なされる業務や、企業が十分な経済基盤を持っていない場合は、許可が下りにくくなる傾向があります。特定技能ビザなどを除き、原則として単純作業への就労は認められていないため、どのような業務を行うかについては、企業と相談の上、申請前にしっかりと整理しておくことが不可欠です。
最終的には、本人の経歴、職務内容、企業の信頼性が審査の大きな材料となるため、就労ビザへの変更を希望する場合は、事前に条件を満たしているかを確認し、可能であれば行政書士など専門家のアドバイスを受けながら申請を進めるのが安心です。
■手続きミスを防ぐためのチェックリスト
在留資格変更の申請においては、ひとつのミスが不許可の結果を招くことも少なくありません。申請前に以下のようなポイントをチェックすることで、ミスを未然に防ぎ、審査の通過率を高めることができます。
まず最も重要なのは、提出書類の整合性です。在留カードの情報と申請書の内容が一致しているか、パスポートの記載内容と矛盾がないかを確認します。さらに、申請理由書に記載された職務内容が雇用契約書や会社案内と一致していることが必要です。ここに少しでも違和感があると、審査官の心証を悪くする要因になります。
また、写真の規格が正しくない、会社の登記簿謄本が古い、本人署名が抜けているなどの初歩的なミスも、書類の再提出や審査の長期化を招く原因になります。加えて、申請時期にも注意が必要です。在留期限ギリギリでの申請はリスクが高く、できる限り余裕を持って手続きを進めるべきです。
こうしたミスを防ぐためには、社内に外国人雇用の手続きに精通した担当者を配置する、もしくは行政書士などの専門家と連携する体制を整えることが現実的です。申請を形式的に捉えるのではなく、戦略的に進めていくことが、在留カードの「就労不可」からの脱却に繋がります。
就労不可を正しく理解し、トラブルを未然に防ぐには
外国人の雇用が一般化する中で、企業が直面するリスクのひとつが「就労不可」の在留カードを持つ人材の雇用です。無意識に法令違反をしてしまうケースも少なくありませんが、その多くは「知らなかった」では済まされない状況に発展します。就労の可否は、在留カードに明記されている内容と、本人が持つ在留資格・許可の範囲によって厳密に決まっています。
こうしたトラブルを防ぐためには、制度の正しい理解だけでなく、企業としての確認体制やルール整備が欠かせません。採用時に在留カードの表面と裏面を丁寧に確認することはもちろん、資格外活動許可の有無や在留期限、就労制限の内容についても把握し、記録として残す運用が求められます。
この記事では、在留カードを確認する際の具体的なポイントや、就労不可に関する社内ルールの作り方、そして困ったときに頼れる専門家の相談先について、現場レベルで実践できる対策を中心に詳しく解説していきます。
■在留カードの確認ポイントまとめ
外国人を採用する際、最初に確認すべき書類が在留カードです。しかし、表面的に確認するだけでは不十分であり、具体的なチェックポイントを把握しておく必要があります。まず重要なのが「在留資格」と「就労制限の有無」の欄です。ここに「就労不可」と記載されていれば、基本的に報酬を伴う労働はできません。ただし、裏面に「資格外活動許可あり」と記載されている場合は、例外的にアルバイト等の就労が可能なことがあります。
次に確認すべきは在留期間です。在留期限が迫っている場合、就労中に資格が切れるリスクもあるため、継続雇用には注意が必要です。また、在留カードが更新手続き中かどうか、裏面に特別な指示が記載されていないかも見逃してはいけません。
さらに、カードの真偽も確認する必要があります。ICチップが内蔵された在留カードは、法務省の公式アプリなどを使って読み取りが可能です。不正取得されたカードを誤って使用されないように、本人確認と併せて複数の証明書類を照合する習慣も重要です。
これらのチェックは入社前だけでなく、在留期限が近づくたびに定期的に行う必要があります。雇用管理上のリスクを最小限に抑えるためには、確認をルール化し、記録として残すことが企業の信頼を守る手段となります。
■就労不可に関する社内ルールの作り方
外国人労働者を適切に管理するためには、就労不可の在留カードを持つ人材への対応ルールを、社内で明確に整備しておくことが不可欠です。属人的な対応に頼るのではなく、組織として一貫性のある管理体制を構築することで、法的リスクを回避しやすくなります。
まずは採用プロセスにおける在留カード確認の標準化が重要です。誰がどのタイミングで確認し、どの項目をチェックするのかを具体的に明記したマニュアルを用意することで、確認漏れを防ぐことができます。また、在留資格や資格外活動許可の有無を記録に残すテンプレートを社内共有し、労務部門と連携して情報管理を徹底する体制づくりが必要です。
加えて、在留期限の管理もルールに組み込むべきです。期限が切れる前に自動的にアラートが出るような仕組みを導入したり、月に1回の在留カードチェック日を設定したりすることで、更新忘れを防ぐことができます。
さらに、外国人本人にもルールを周知することが重要です。「資格外活動許可がないまま働くことは違法である」「在留カードに変更があった場合は速やかに報告する」など、雇用契約時や入社研修で必ず説明し、書面で同意を得ておくことが理想です。
■困ったときに頼れる行政書士・相談先一覧
在留カードの就労制限や資格変更、雇用リスクに関して不安がある場合には、専門家の力を借りるのが最も確実な対応策です。とくに、出入国在留管理庁への申請書類作成や在留資格の判断においては、行政書士が最も頼れる存在です。入管業務を専門とする行政書士は、最新の制度にも精通しており、企業の実態に即したアドバイスを提供してくれます。
地域によっては「外国人雇用サービスセンター」や「出入国在留管理局の相談窓口」も活用できます。これらの公的機関では、外国人雇用に関する制度や手続きに関して無料で相談できるほか、必要に応じて適切な専門家を紹介してくれることもあります。
また、外国人採用を専門とする人材紹介会社や、顧問契約を結んでいる社労士・税理士事務所に相談するのも有効です。これにより、法的な手続きだけでなく、外国人の就労に関わる給与計算や労働条件の整備までトータルに支援を受けることができます。
一社で対応が難しい場合は、早い段階で専門機関と連携し、トラブル発生前に未然に防ぐ体制を構築することが、これからの時代に求められる経営判断です。