
「特定技能外国人の採用は、本当にコストに見合うのか?」
人手不足解消の切り札として特定技能制度に注目しつつも、初期費用や月々のランニングコスト、さらには見えない「隠れコスト」の全貌が見えず、経営層への稟議に踏み切れない…そんな不安を抱えていませんか?安易なコスト削減が、かえって法令違反や早期離職という「失敗コスト」を招くのではないかという懸念もあるでしょう。
本記事では、特定技能採用にかかる費用を単なる「出費」としてではなく、「戦略的な投資」として捉えるためのTCO(総所有コスト)とROI(投資対効果)の視点を提供します。2025年最新の制度改正動向も踏まえ、採用の質がいかに長期的なコスト削減に繋がるかを具体的に解説。この記事を読めば、企業が自信を持って特定技能導入を進めるための、明確な論拠と具体的なアクションプランが見えてくるはずです。
目次
特定技能の費用は「コスト」ではなく「投資」と捉えるべき理由
特定技能外国人の採用は、単に目の前の人手不足を解消するだけでなく、企業の持続的な成長を支える「戦略的な投資」として位置づけることが重要です。単なる「出費」として費用を捉えるだけでは、その真の価値を見誤ってしまう可能性があります。
費用を評価する際には、TCO(総所有コスト)とROI(投資対効果)という経営指標の視点を取り入れることが不可欠です。TCOとは、初期費用だけでなく、運用・維持にかかる費用、さらには見落とされがちな隠れたコストまで含めた総額を指します。一方、ROIは、投じた費用に対してどれだけの効果(リターン)が得られたかを測る指標です。
特定技能人材への投資は、人手不足の解消という直接的な効果に加え、現場の安定化、日本人社員の負担軽減、ひいては企業全体の生産性向上や成長に貢献する可能性があります。特に2025年以降の制度改正動向も踏まえると、長期的な視点での人材育成と定着が、より高いROIをもたらす鍵となります。
特定技能にかかる費用の全貌:初期費用・継続費用・隠れコスト
特定技能外国人の採用には、多岐にわたる費用が発生します。これらの費用項目を網羅的に把握し、総コストの全体像を明確にすることで、経営層への稟議や予算策定がスムーズに進むでしょう。ここでは、採用から雇用継続までに発生する主な費用とその相場、そして見落としがちな隠れコストについて解説します。
■採用時に発生する初期費用(相場と適正水準)
特定技能外国人を採用する際に、まず発生する初期費用は以下の通りです。相場はあくまで目安であり、契約内容や状況によって変動します。
人材紹介手数料: 特定技能外国人の紹介を専門とする企業に支払う費用です。相場は10万〜30万円程度が一般的ですが、成功報酬型や固定料金制など、契約形態によって異なります。
送り出し機関への手数料: 国外から外国人材を招へいする場合、現地の送り出し機関を利用することがあります。この手数料は、二国間協定(MOC:Memorandum of Cooperation)に基づき、適正な水準が定められています。MOCは、日本と外国政府間で特定技能制度の適正な運用を目的として締結される協力覚書のことです。
在留資格申請費用: 特定技能の在留資格申請には、出入国在留管理庁への申請手数料(収入印紙代)が発生します。行政書士に申請代行を依頼する場合、別途10万〜20万円程度の報酬が発生することが多いです。自社で申請することも可能ですが、専門知識と手間がかかります。
入国時の渡航費用: 外国人材が日本に入国する際の航空券代などです。相場は5万〜10万円程度ですが、原則として企業が負担すべき費用とされています。外国人本人に負担させることは、法令違反のリスクがあるため注意が必要です。
その他初期費用: 健康診断費、入社前研修費などが別途発生する場合があります。
初期費用は以下の表でご確認いただけます。
■雇用開始後に発生する継続費用(相場と適正水準)
特定技能外国人を雇用した後も、継続的に以下の費用が発生します。
登録支援機関への委託費用: 特定技能外国人を雇用する企業(特定技能所属機関)は、法務省令で定められた10項目の義務的支援を実施する必要があります。この支援を外部の登録支援機関に委託する場合、月額2万〜4万円程度の費用が発生し、年間では24万〜48万円程度が目安となります。支援の「質」が外国人の定着に大きく影響するため、費用だけでなく、提供される支援内容をしっかり確認することが重要です。
在留資格更新費用: 特定技能1号の在留期間は通算で最長5年ですが、1年、6ヶ月、または4ヶ月ごとに更新手続きが必要です。行政書士に更新申請を依頼する場合、1回あたり3万〜6万円程度の費用が発生します。
特定技能外国人に支払う給与・福利厚生: 特定技能外国人の給与は、日本人と同等以上の水準であることが法令で義務付けられています。社会保険料や労働保険料、福利厚生費なども日本人従業員と同様に発生します。
住居の準備費用: 企業は特定技能外国人に対し、住居の確保に関する支援を行う必要があります。初期費用として敷金・礼金、家具家電の購入費用、継続費用として家賃補助や社宅提供などが考えられます。
その他継続費用: 日本語教育や定期健康診断など、外国人が日本での生活や業務に慣れるためのサポート費用が別途発生することがあります。
■見落としがちな「隠れコスト」と「失敗コスト」
目に見える初期費用や継続費用だけでなく、特定技能採用には見落としがちな「隠れコスト」や、採用に失敗した場合に発生する「失敗コスト」が存在します。これらをTCOの視点で考慮することが重要です。
再採用コスト: 採用した特定技能外国人が早期に離職してしまった場合、再度人材探しから始めることになり、初期費用(紹介手数料、申請費用など)が再び発生します。これに加えて、再教育・研修コストや、現場のOJT(On-the-Job Training)負担も増大します。一人の再採用にかかるコストは、数十万円に及ぶことも珍しくありません。
教育・研修コスト: 入社後のOJT、日本語能力向上のための教育、業務に必要な専門研修など、外国人材が戦力となるまでの育成にかかる時間的・金銭的コストです。
機会費用(Opportunity Cost): 人手不足が解消されないことによって生じる売上機会の損失や、日本人社員への業務負担増加による生産性低下、離職リスクなどがこれにあたります。採用活動が遅延するほど、この機会費用は膨らんでいきます。
法令違反による罰則・企業イメージ毀損: 安価な業者を選んだ結果、外国人本人への不当請求や支援義務の不履行など、法令違反が発生するリスクがあります。これにより、行政指導や罰則、さらには企業の信頼やイメージの失墜といった深刻な失敗コストを招く可能性があります。
特定技能採用におけるTCOブレークダウンを円グラフで示すことで、初期費用、継続費用だけでなく、再採用コストや機会費用といった「隠れコスト」が大きな割合を占めることがあると理解できます。これらの隠れコストをいかに抑えるかが、TCO削減の鍵となります。
採用経路別で見る特定技能の費用比較と最適な選び方
特定技能外国人の採用には、主に3つの経路があります。それぞれの経路で費用相場やメリット・デメリットが異なるため、自社の状況やニーズに合わせて最適な経路を選ぶことが重要です。
■国外在住外国人を招へいする場合の費用とメリット・デメリット
費用相場: 現地の送り出し機関への手数料や渡航費用などが発生するため、初期費用が高めになる傾向があります。
メリット: 若年層の人材を確保しやすく、大規模な採用計画に対応できる可能性があります。
デメリット: 採用から来日までにかかる期間が長く(3ヶ月以上)、手続きが複雑です。また、来日前の外国人材に関する情報が限られる場合があります。
■国内在住外国人を採用する場合の費用とメリット・デメリット
費用相場: 渡航費用などが不要なため、国外からの招へいに比べて初期費用を抑えやすい傾向があります。
メリット: すでに日本にいるため、即戦力化が早く、面接や事前確認が容易です。手続き期間も比較的短く(1ヶ月程度)済みます。
デメリット: 優秀な人材は競争率が高く、求職者が限定的である場合があります。また、在留資格変更手続きが必要になるケースもあります。
■技能実習2号からの移行の場合の費用とメリット・デメリット
費用相場: 既に日本で技能実習生として働いているため、最も初期費用が抑えられる傾向にあります。
メリット: 日本での生活経験、業務経験、一定の日本語能力があるため、現場への適応がスムーズです。制度への理解も深いため、支援コストを抑えられる可能性もあります。
デメリット: 特定技能への移行が可能な対象分野が限定的であり、候補者数が少ない場合があります
失敗しない特定技能採用のための「適正な費用」と法令遵守のポイント
特定技能採用を成功させるためには、費用が「安い」ことだけを追求するのではなく、「適正な費用」で法令を遵守し、質の高い支援を受けることが不可欠です。安易なコスト削減は、かえって大きなリスクを招く可能性があります。
■「手数料0円」の裏に潜むリスクと見極め方
「手数料0円」を謳う事業者には注意が必要です。外国人本人に不当な費用を請求したり、法令で定められた支援を適切に行わなかったりするケースが報告されています。このような業者を利用すると、企業側が法令違反(不法就労助長など)に問われるリスクや、外国人材の早期離職、ひいては企業イメージの毀損につながる可能性があります。安価すぎるサービスには必ず裏があると考え、契約内容を詳細に確認し、信頼できる事業者を選ぶことが重要です。
■外国人本人に負担させてはならない費用項目
特定技能制度では、外国人材が日本で安心して働けるよう、企業が負担すべき費用が明確に定められています。保証金や違約金などの費用を外国人本人に負担させることは、法令で禁止されています。
保証金
違約金
義務的支援に要する費用(登録支援機関へ支払う支援料・日本語学習費用など)
これらの費用を外国人本人に負担させた場合、法令違反となり、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。常に最新の情報を確認し、適正な費用負担を徹底しましょう。
■質の高い登録支援機関・行政書士の選び方
特定技能採用を円滑に進めるためには、信頼できる登録支援機関や行政書士の存在が不可欠です。選定の際は、以下のポイントを確認しましょう。
実績と専門性: 特定技能支援の実績が豊富か、自社の業種に関する専門知識があるか。
支援内容の透明性: 法令で定められた義務的支援10項目をどのように具体的に実施するか、報告体制は明確か。
費用対効果: 提示された費用が、提供される支援の質と見合っているか。
TCOを劇的に削減!採用の「質」が長期的な特定技能費用に与える影響

特定技能採用において、費用対効果を最大化し、TCO(総所有コスト)を劇的に削減する鍵は「採用の質」にあります。単に人手を増やすだけでなく、質の高い人材を確保し、定着させることが、長期的なコスト削減に繋がります。
■低い定着率が招く「再採用コスト」の深刻な影響
採用した特定技能外国人が早期に離職してしまうと、以下のような深刻な再採用コストが発生します。
初期費用(紹介手数料、申請費用など)の再発生: 一度支払った費用が無駄になり、再度同じ費用を投じることになります。
再教育・研修コスト、現場のOJT負担の増加: 新しい人材に再度教育を行う手間と時間が発生し、現場の日本人社員の負担も増えます。
人手不足の継続による売上機会の損失(機会費用): 離職によって人手不足が解消されず、本来得られたはずの売上を逃すことになります。
これらの再採用コストは、一人あたり数十万円から百万円以上にもなることがあり、TCOを大きく押し上げる要因となります。
【最新】特定技能制度改正が費用構造に与える将来予測
特定技能制度は、社会情勢や経済状況に応じて常に変化しています。特に2025年以降は、特定技能2号の対象分野拡大が予定されており、これが費用構造や採用戦略に大きな影響を与える可能性があります。
■特定技能2号の対象分野拡大と長期定着への期待
特定技能2号の対象分野が拡大されることで、外国人材がより長期間日本で働き、家族帯同も可能になる見込みです。これにより、企業にとっては以下のようなメリットが期待できます。
育成投資の回収率(ROI)向上: 長期的な雇用が可能になることで、企業が人材育成に投じたコストをより確実に回収できるようになります。
キャリアパス形成によるモチベーション向上と定着率への好影響: 長期的なキャリアパスが描けることで、外国人材のモチベーションが向上し、定着率のさらなる向上が期待できます。
企業が長期的な視点で人材育成計画を立てるメリット: 企業の人的資本計画に特定技能人材を組み込みやすくなり、より戦略的な人材活用が可能になります。
■制度変更に伴う費用変動の可能性と備え
制度変更に伴い、申請費用や支援費用などが変動する可能性があります。企業は常に最新の情報を入手し、それに対応できるよう備えておく必要があります。
特定技能の費用に関するよくある質問(FAQ)

特定技能の費用に関して、よくある質問とその回答をまとめました。
■Q. 特定技能と技能実習、5年間の総コストはどちらが安い?
一概にどちらが安いとは言えません。単純な初期費用や月額費用だけでなく、TCO(総所有コスト)の視点から比較することが重要です。技能実習は「国際貢献」が目的であり、特定技能は「人手不足解消」が目的という根本的な違いがあります。
特定技能(高品質採用)の場合、初期費用は高い傾向にありますが、高い定着率によって再採用コストが低く抑えられ、結果として5年間のTCOが安くなる可能性があります。一方、技能実習は初期費用が比較的低いものの、離職率や再採用のリスク、監理団体への費用などを考慮すると、総コストが高くなるケースもあります。
■Q. 自社で特定技能外国人を支援する場合の注意点と費用は?
特定技能の支援義務は、法令で定められた10項目にわたります。これらを自社で全て実施する場合、専門知識が必要となるだけでなく、担当者の工数や人的コストが大きく発生します。また、支援の質が不十分だと、外国人材の定着に悪影響を及ぼしたり、法令違反につながったりするリスクもあります。
■Q. 業種(介護・飲食・建設)特有の特定技能費用はありますか?
はい、業種によって特有の費用が発生する場合があります。
介護分野: 在留資格申請費用や登録支援機関委託料の他に、外国人材の日本語能力や介護技術を向上させるための講習費が別途発生する場合があります。相場は10万〜20万円程度が目安です。
飲食・建設分野: 住居の手配や生活環境整備に関する費用が、他の業種と比較して多く発生する場合があります。
まとめ:特定技能の費用は「戦略的投資」で見極める
特定技能外国人の採用にかかる費用は、単なる「コスト」としてではなく、企業の「戦略的投資」として見極めることが重要です。初期費用、継続費用に加えて、見落としがちな隠れコストや、採用の質が長期的なTCO(総所有コスト)に与える影響を総合的に評価することで、真の費用対効果(ROI)が見えてきます。
執筆者:STAYWORKER事業部 / 益田 悠平
監修者情報:外国人採用コンサルタント / 堀込 仁志
株式会社USEN WORKINGの外国人採用コンサルタント。人材紹介・派遣の法人営業として多くの企業の採用課題に、そして飲食店経営者として現場のリアルに、長年向き合ってきた経験を持つ。採用のプロと経営者、双方の視点から生まれる具体的かつ実践的な提案を信条とし、2022年の入社以来、介護・外食分野を中心に数多くの企業の外国人採用を成功に導く。